vol.787『ポスト・コロナ時代』

新型コロナウイルスの感染拡大に備え,東京をはじめ7都府県で緊急事態宣言が発令された。これまで,経済に及ぼす被害を懸念し躊躇していた安倍首相も,医療崩壊の恐れが高まっているとの声に押されるかたちで決断したようだ。とはいえ,不要不急の外出自粛要請に法的根拠が生じるものの,強制力はなく,海外のような都市封鎖を想定してはいない。これまでどおり,銀行でお金を引き出し,ガソスタで給油をし,スーパーに食料品を買いに行くことができる。果たして,そんな緩い措置で感染爆発を防ぐことができるのか疑問を呈する専門家もいるが,首都圏をロックアウトするようなことになれば,大パニックを引き起こすことになるだろう。すでに,東京を脱出して,感染者数の少ない地方都市へ一時的に移住しようという人が増えているらしい。

 該当する都市の飲食店などからは「心が折れそう」との悲痛な声が報じられている。宣言による期間は当面1ヶ月を目処にしているとのことだが,インバウンドによる収益がほぼゼロとなったうえに,外出自粛が徹底されることになれば,零細事業者は廃業せざるを得ない。一足早く宣言を出した北海道のある飲食店々主は,宣言後,客数ゼロの日が続き,「融資を受けて店を続けるか悩んだが,先が見通せず,リスクが高すぎる。たとえコロナが収まっても,今後の景気を考えると継続は難しい」と語り,今年1月に脱サラして開店した店をたたむ事になったという。(4月10日付「十勝毎日新聞」より)

 そうなのだ。多くの経営者が悩んでいることは,いまの苦境を乗り切ることもさることながら,この状況がいつまで続くのか,そして,そのあとどんな世界になってゆくのかが予測できず,そのことが一層不安を増幅させ,絶望の淵へと追い込むのだ。かつてレーニンは「何十年もなにも起こらないことがあるが,数週間のうちに数十年分が起きることもある」と述べたが,いまはまさにそのような状況だといえる。果たして「ポスト・コロナ時代」はどのようなものになるのだろう。

例えば,大都市,つまり多くの人々が狭い面積に密集するという古今東西当たり前のように考えられてきた生活概念が覆るのではないかという論がある。実際,テクノロジーの進歩によって,リモートで働き,ZOOMで会議や授業を行い,ネットで商品を注文し,医師の診察を受け,エンターテイメントを楽しむことができるようになった。これらのソリューションは何年も前からあったものだが,コロナショックによって一気に加速した。そして,「やってみたら以外に使える」とか,「会議の生産性があがった」,「授業が活発になった」などの肯定的な意見が増えているという。

これまで,当たり前とみなされていた事が,必ずしも不可欠なものではないということが,コロナショックによって明らかになり,従来型のシステムやサービスは,大幅に縮小されてしまうだろう。そうなれば,人が一所に固まる必要はないわけで,大都市の必要性が大きく見直されることになり,いよいよ“地方の時代”が到来するかもしれない。

 GS業界においては,すでに店舗のセルフ化が進んでいるが,これを機に一段と進むかもしれない。濃厚接触を嫌って,恐る恐るセルフ給油に挑んでみたら“な~んだ,案外簡単じゃないの”ということになり,ますますセルフ化が進むかも。まあ,いまさらの感もあるが…。

東レ経営研究所のエコノミスト・増田貴司氏の次のコメントは傾聴に値すると思う。「不況が来たので,改革は後回しで,身を縮めて嵐が去るのを待つ姿勢では,コロナ後の世界を生き延びることは難しい。未曽有の不況だからこそ,眼下の構造変化を見逃さず自ら変革に着手することが生き残りへの最善の策となる」。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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