セブン&アイが、一昨年のSUNOCO社に続いて、大手精製販売会社マラソン社傘下のSpeedWay(SW)の買収を発表しました。2兆1千億円という破格の買収額はコロナ以降で世界最大規模です。
店舗数で全米1位のセブンと3位のSW社のプロフィールを調べたら、マラソン社の源流は19世紀のロックフェラー・スタンダードオイル(ス社)傘下企業です。ス社が集中排除で解体されて以降、独自に歩んでいます。精製能力172万BDで日本最大のENEOSと大差ありません。中古型製油所には軽質原油を投入し、新鋭の大型製油所は高い重質油分解能力を持っています。
SSブランドとしてはマラソンの他に、かつてJエナジーが提携して日本でコンビニampmを展開したアルコ、そしてSWです。
SW社は3900店舗です。マラソン社HPによると、コンビニ併設SSは全店直営方式で運営されています。店舗数はセブンが全米一位、SWは3位です。買収により1万4千店となります。
セブンのガソリン販売店舗は半数の4千5百店ですが、SWは全店がSSです。
米国コンビニ専門誌が「ガソリンのシェア効率ベスト50社」を公表しています。店舗数シェアに対する販売シェアの倍数です。平均の何倍売るかです。SWは1.95と全米平均の2倍の販売量を持っています。ランキングで21位。逆に、セブンはランク外です。
セブンの年間ガソリン販売量は2640万KLです。ENEOSを凌駕しています。SWはSS当りセブンの1.5倍(セブンの資料)販売しますから年間3400万KLになります。両社合わせれば年間6千万KL超となり、日本の総販売量を軽く凌駕します。
日本と違って、米国FTC(公取委)は企業集中に神経質ですから、地域によっては店舗の売却命令が出るかも知れません。それでもセブンが破格のM&Aを選択したのは、「人口、GDPとも規模が大きくかつまだ伸びる市場」(セブン井坂会長・HPにて)ということです。
米国ではコンビニのM&Aや店舗買収が活発化しています。フレッシュフードやPB商品などチェーン独自の商品・サービス開発力勝負に突入して、旧態依然とした業態では立ち行かなくなっています。店舗競争の高度化です。
米国ではSS=コンビニです。
今回のM&Aでセブンはガソリンの魅力を明言しています。井坂会長は、①超的に米国需要は緩やかな減少(30年間で0.4%)、②SUVなど低燃費車が伸びる一方EVは限定的、③粗利は低位安定、④ガソリン価格がサウジ並みに安い(産油国であるから)等を挙げています。
ということは、EVはともかくとして「着実に減販し高燃費車が多くガソリン価格が高い」日本市場では、セブンにとってSS併設業態の魅力は高くないかもしれません。
国内でSS併設業態を進める上で、私は大きなネックがあると考えています。
ENEOSで約180カ所のセブン併設店があります。高い集客力と年間百万KLほどのガソリン販売貢献があると想像されます。非常に便利です。
問題はSS併設店は元売直営はじめとして有力企業が並ぶことです。コンビニFCは本来、店主家族の自己労働を前提に成り立っています。しかし、特約店経営者がコンビニの深夜シフトに入ることはまずありえません。
米国セブンは直営24%、70%が社有賃貸でFC店自己所有は6%に過ぎません。地場の名士が少ないだけに、フレッシュフードや新タイプ店舗など戦略を進めやすいでしょう。FC店の属性と性格からも、日本SSコンビニ併設は増加に限界を抱えていると思います。
ただし、CA(コミッション・エージェント)は併設業態に最適だと思いますが。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局