油業報知新聞に令和2年6月末の系列別SS数が掲載されていました。
3月末比でSS総数は73カ所減で、これは昨年と同様の傾向です。7,8年前の年間1千カ所減少に比べればカーブがかなり緩やかになっています。減少の飽和というか、SS数が需要減なりに適正化しているのかもしれません。
3月末の系列SS数を資源エネ庁公表のSS数から差し引くと、PBは約7千カ所です。PB比率は23.5%で数年変わりません。
セルフSSでシンボリックな傾向が出ています。系列セルフSSの50%強が元売社有SSです。フルを含めた社有SSの73%がセルフ化されています。一番低いENEOSでも69%です。これはSSの母数が大きすぎるので仕方が無いでしょう。
系列SS全体のセルフ比率は37%になっています。ガソリン販売でセルフが平均の1.5倍なら販売シェア56%、2倍なら74%となります。たぶん実態は後者に近いと推定されます。
思い起こせば、1998年、セルフ解禁時に石連、全石連が「セルフ反対の大合唱団」をやった時代は一体何だったのだと考えこんでしまいます。“セルフは日本の商慣習に合わない!”と、元売社長が堂々と業界紙で持論を展開していました。
20年後の社有SS7割セルフの現状を見るに、どれほど本気で反対論を述べていたのか不可思議です。おそらく、本音はセルフ反対ではなく、「前例のないモノは怖い」だったと思います。
その一方で、香川県のSS経営者たちは解禁当初のセルフになだれ込みました。前例のないモノに果敢に飛び込みました。恐るべきさぬきうどんならぬ”恐るべき讃岐セルフ”でした。
元売では外資のエッソが”来たかセルフよ待ってたホイ”と立地・業態別に実験店を立ち上げました。COCの経営者たちも果敢に一番風呂へ飛び込みました。
こういう人たちの「前例」が見えてきた時に、元売社長さんたちは前言をばっくれてセルフ化戦略に舵を切りました。
皮肉はここまでにして、これから元売ブランドを象徴する業態はセルフが前提となることは明々白々です。セルフは投資すれば誰でもできます。そこでどういうブランド力を発揮するのかが、独立系にとって関心あるところです。
ガソリンだけを売る場所としては、元売セルフとりわけ社有の直営SSは屈指の優位性を持ちます。PBは立地、規模、設備、システムいずれも敵いません。
では、ガソリン需要の縮小とコロナ禍の新常態における、系列チェーンとしてのマーケティングをどうするのでしょうか。元売は近未来イメージを描いていますが、そこには水素、EV給電、カーシェアリング、コンビニ、宅配便の中継、コインランドリー、各種生活支援等々が描かれています。
コストや市場性を考えれば、中小企業の”ふつうのSS事業者”にはやり切れないものばかりです。あるいはすでに強力なコンペティターや専門業者が存在しています。
無機質で差別性のないガソリンは効率的な供給システムとして、元売社有SSは最適の装置たり得ます。しかし、今はガソリンの意味が変化して、経営者個々のガソリンの位置付けに多様性を感じています。独立系の立ち位置で見ていると、よく分かります。
SSに限らず業態を再構築する時、消費者目線を持った小売経営者の感覚が不可欠です。独立系は、自分に与えられた立地・設備・店舗数・資本力に応じて、我が社のあるべき姿を模索します。「最後の砦」と一枚岩になるどころか、ショットガン(散弾銃)のように各自の方位に走ります。お仕着せの全国標準系列よりも、独立系が消費者本位のセルフSS業態革新が生まれると見ております。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局