vol.819『感染は自己責任か?』

ファミリーレストラン「ガスト」などを展開する「すかいらーくホールディングス」が、首都圏を中心に200店舗を閉店すると発表した。「洋服の青山」は、リモートワークの広がりや冠婚葬祭の減少でスーツの売り上げが大幅に落ち込んだため、今年度の最終赤字は290億円を超える見通しとなり、今後3年間で160店舗の閉店を予定しているとのこと。「近畿日本ツーリスト」は、個人旅行向け店舗の3分の2を閉店し、従業員も3分の1を削減する。

コロナ禍の長期化が、様々な業種に打撃をもたらしている。GS業界も例外ではない。「東京商工リサーチ」によれば、今年1-10月のガソリンスタンドの倒産(負債1000万円以上)は21件で前年同期を23㌫上回り、2019年通年の19件も超えた。負債総額は37億9、500万円と、前年同期の2倍増に膨らんだ。無論、事由の大半は「販売不振」である。ジリ貧状態に陥っていたGSをコロナがとどめを刺した格好だ。

世界中の祈りもむなしく、コロナ禍は各地で新たなフェーズへと進んでいる。欧州の諸都市では再びロックダウンが。日本でも一日の感染者数が連日過去最多を更新しており“第3波”に突入した。いまのところ政府は緊急事態宣言の再発令には消極的なようだが、この状況が続けば、早晩決断せざるを得ないだろう。

“「GoTo」キャンペーンなんてやるからまたぶり返したんだ”と思っている人は少なくないだろうが、観光業や飲食業を慮って公言するのははばかられる。彼らが被った痛手は、GS業界の比ではない。それに、経済と予防が両立し得ないことは初めから分かっていたことで、今回の感染者の増加は織り込み済みだったのではないか。今後も、「GoTo」キャンペーンを続行する以上、感染者数は確実に増え続ける。いまの日本は、菅首相の言葉を借りれば、“経済は「公助」、予防は「自助」”ということか。自分の命と健康は自分で守るしかないようだ。

しかし、「コロナ感染は自己責任」というのは誤った考え方だと思う。手洗いや消毒をこまめに行い、飲み会や夜の街に行っていなくても感染してしまったという事例もある。“コロナに感染したのはルールを守らなかったり、だらしない生活をしているからだ”と決め付け、犯罪者扱いする差別思考は、無知蒙昧の極みだが、残念ながら後を絶たない。例えば、愛媛県今治市の飲食店で「この顔に、ピンと来たらコロナ注意!」といった言葉とともに、感染者の顔と名前が入ったチラシがばらまかれる事件が起こり、現在までに3人が逮捕されている。

こんなことだと、“コロナに感染したかも”と思っても、バッシングやリンチを恐れて検査を受けることを躊躇し、“隠れ感染者”を増やすことになりかねない。恐怖が差別を生み、差別が憎悪を生み、憎悪が分裂を生み出す。コロナはいずれ収束したとしても、人々の間に生じた不信感や敵対心が拭い去られることはないだろう。

とにかくいまは“君子危うきに近寄らず”。感染したくなかったら、どこへも「GoTo」せず、巣篭もりを続けるしかない。私は元来、インドア人間なので、現状にはあまりストレスを感じてはいない。“君子”ではないけれど、仕事と買い物以外の用事でどこかへ行こうという気にならない。先週、九州地方に出張したものの、観光や遊興には一切興味なし。真面目な(?)性格が幸いしている。

我が「セルフスタンド日進東」は、“給油のみセルフ”と蔑まれてきたが、感染リスクを伴う作業がなく、お客との対面もほとんどないうえ、感染対策のコストも軽微ですむ。こんな時代が来るなんて夢想だにしなかったが、改めて、ローコスト・セルフシステムの安全性と合理性を実感できている。コロナ禍で“篭城”するにはうってつけの場所だ。

 セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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