コスモ石油と三愛石油グループのキグナス石油が資本業務提携を結びました。
「両社グループをあわせた国内での燃料油販売シェアは14%となり、国内石油業界の第三極として永続的な成長と企業価値の最大化を目指してまいります。」とコスモ石油のニュースリリースに書かれています。誇らしげに見えます。「第三極」は、今年の“業界流行語大賞”になるかもしれません。キグナス石油は、来年、東燃ゼネラル石油との供給契約更新を控えており、企業存続に関わる「2018年問題」を抱えています。「コスモ同盟」により光明が見えたといえます。
商社の方と話しましたが、独立系にとって悪い話ではない。ただし、日本のガソリンは安いので、現時点で製品輸入は考えられず両社の供給力から“ガソリンショートポジション”を覚悟しておくべきと言われました。いずれにしても、第三極で大手2社の対立軸になる覚悟を固めたわけです。全盛期の藤原道長の如く“この世をばJXTGの世とぞ思う望月(満月)の欠けたることもなしと思へば”に傾いていただけに、健全な流通業界の競争と革新に期待しています(今のところは)。
「二強」ばかりが喧伝されますが、その他3社は座して死を待つことはありえません。また、再編元売は新組織の融和と軋轢解消など「異文化対策」に時間を取られますから、その間隙を衝いて社内問題のない第三極あるいは商社や大手流通企業から思わぬ一手が続出することを(かすかに)期待しています。
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過日にCOCの新年研修会を行いましたが、講演資料でIEA(国際エネルギー機関)が元売再編に関して日本政府に出した「警告」が出ました。「2017年には2つの巨大な石油グループが誕生し、精製面での合理化が進むことを評価する。しかし卸・小売において確固たる地位を両グループが占めることから競争に関連する問題が発生する可能性が懸念される。日本政府は小売部門における競争を監視し、予想される懸念に効果的に対応することが必要である」。
これを読むと、IEAは日本の石油業界はドミナント産業であり、精製よりも流通市場が重要な役割を果たしている「国内型産業」の実態を看破しています。そして再編が流通に打撃を与える懸念を明らかにしています。しかし、公正取引委員会判断は、IEA警告を無視したものとなりました。「国内産業」を担う流通業者の競争力維持が全く無視されました。
「製品輸入」など絵に描いた餅に過ぎず、前述のようにガソリンは海外高・国内安です。だから元売は利益の出る輸出に回します。石連統計で2016暦年は15年比8%減少しましたが、ガソリン輸出は325万㌔㍑で生産量の6%です。キグナスと太陽より大きな販売量です。14年は273万㌔㍑、13年は156万㌔㍑です。「製品輸入10%」で集中排除どころか、輸出が10%に近づいています。公取委の悪い冗談にしか見えません。
流通に対する実効的な集中排除も無く再編が承認されたことで、元売が都合のよい流通デザインを描きやすくなりました。PBにとって好ましい環境ではありません。それ以上に、元売が大きくなることは系列取引において、確実に系列店の裁量縮小をもたらします。IEA警告に背いて流通競争力を担保しなかった公取委の判断は、苛斂誅求なるSSとう汰をもたらしかねません。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局