9月8日付日本経済新聞のトップ記事は、「ロシア石油が裏流通、英発表『輸入ゼロ』実態とズレ」でした。ウクライナ侵攻で経済制裁している英国に、ロシアから密かに石油が流入している内容です。日経取材陣のスクープ報道ですね。
黒海のロシア港を出たタンカーがギリシャ近海でパナマ船籍のタンカーに「瀬取り」する光景を、日経女性記者が撮影しています。「購入したのは、ロスネフチと深い取引関係を持つ資源商社大手トラフィギュラ(スイス本社)。同社は石油を英国に運び、英石油元売り中堅のプラックスグループに売却した」そうです。
英国統計局の石油貿易データでは、対露輸入はゼロになっています。しかし実際には荷姿を変えて、善意の第三者であるプラックス社で精製して国内流通しています。
自動識別システムで航行する船舶の喫水線の変化を確認できるそうで、ギリシャ沖だけでロシア船による瀬取りは半年で175件にのぼり、前年比で19.4倍増です。どう考えても裏ルートでロシア貿易が活発に行われているということです。
「ギリシャ沖業転事件」の勃発です。日経記事中に「難度が高い輸入品の『原産地』検証」という見出しがあります。
これって、何年か前までの我が日本石油業界の業転流通にオーバーラップします。ロシアの場合は「出先不明」であり、業転の場合は「届け先不明」の違いはありますが。
最盛期には系列特約店が、サブ店仕向けで他系列や無印SSに供給していました。思い出したのですが、ギリシャ沖と同じようなことも行われていました。北国の某峠がメッカとなり、2台のローリーが並列駐車して“瀬取り”する姿を目撃したことがあります。グローバルスタンダードで、やることは同じですね。
しかし、賢明なる我が国元売は「届け先証明」を開発して、最終届け先を掌握するに至りました。この証明を英国に教えてやったらどうでしょうか。ただし、中間流通からスイス系商社を排除する必要があります。代わって日本の中間商社が入れば、それは立派に元売ならぬ英国に“忖度”して「出先管理」を完璧に遂行するでしょう。
日経記事で思うのは、カネになる石油という商品は行き先を失えば、必ず別の蛇口を見付けるという真理です。
先日、COCビジネス研究会で車販をテーマに勉強しました。その席で、中古車市場価格高騰に関して、海外からの買い付け需要が旺盛という話がありました。
そして、買い付けられた中古車はどういうわけかウラジオストクに到着しており、広大な展示販売場があるそうです。車両の8割が日本車とか。それほどロシアで日本車の人気が高いということです。それは喜ばしいことではあるのですが…。
中古車の主要輸出港トップ5のうち、木更津以外は全て日本海側にあります。ウラジオに至近なので、買い取った非ロシア系企業が日本海で船舶の揚げ地変更をしているのでしょう。
ギリシャ沖ではロシア産石油の、日本海では中古車の「業転問題」が発生しています。
賢明なる日本元売と中間商社が組めば、国内業転同様にゴンタ店(ロシア)届けを阻止できるでしょう。いくら制裁しても、欲しい場所にモノは動くということでしょうか。
車販を積極的に行うSSがオークションに売った車が、ロシア人愛国者の手に移り「Zマーク」を付けてハバロフスクの街を嬉しそうに走っているかもしれません。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局