10月27日にCOC秋季研修会を開催しました。
講師にお呼びしたのは、キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志さんです。「脱炭素は嘘ばかり」という著作が版数を重ねている話題の人物です。東大理学部出身で「原理原則に合わなければ異議申し立てする文化がある。ガリレオ・ガリレイも権威の象徴である教会に異議を唱えた」と、冒頭から物理学徒の行動原理を語られました。
最近NHKを始めメディアの枕詞に「地球温暖化により…」があります。災害も全て「温暖化起因」にされています。杉山さんは過去50年、100年の時系列の公的データを基に「災害は増えていない。100年前に何もなかった所に住宅があるから被害が出ているだけ」と看破しました。
地球温暖化という「物語」を前提に進められるカーボンニュートラルとは何なのかを考えさせられました。
さて、村上さんの話です。“サブ店ごときのセルフ化”を理由に元売マークをはく奪されました。この時、SS経営者である彼は初めて気が付いたそうです。
「ガソリンの買い方が分からない」
資源エネルギー庁長官賞を貰うほどの「真面目な油屋」だけあって、特約店に注文するのが当たり前だったのです。困った村上さんが相談した系列特約店の知人が、たまたまCOCの会員でした。自己物流を行う独立系社長を紹介されて、初めて自己責任の仕入れを経験します。
しかし、PBになったとたん、当時の周辺同業者が「粗悪品」と悪宣伝を始めます。茨城県石商の支部を除名されました。彼は支部除名のまま県石商組合員という意味の分からない存在となりました。
悪宣伝に対しては、品質分析義務を利用して「10日ごとの分析で経産省お墨付き品質。系列は年に1回しかやっていない!」と分析結果をコピーして顧客にばらまきました。ウクライナ軍と同じく効果的な反撃となりました。
さて、ガソリンよりも経営の中核はカーケアセンターATAです。経営戦略は目論見通り運ぶことはまずありません。最初の3年ほどは全く思い通りにならず、村上さんは苦労していました。
この当時、車検自由化に絡めて、元売もカーケア戦略として大型カーショップ併設SSを「実験店」として投入していました。コモディティのガソリンと違って、カーケアは生業的な部分が強い世界です。“どうせ人の金”の予算を使う元売戦略は、2、3年で行き詰まり撤退していきました。大企業のサラリーマンには、菜っ葉服でカーケアに人生を賭ける熱量も覚悟もなく、「実験店」というエクスキューズで無かったことにできます。
一方、地場中小企業の村上さんは元々背水の陣を敷いています。撤退は会社の死を意味します。溺れる者は藁をもつかむの言葉通り、言うことを聞かない整備士と真正面から闘い人員を入れ替え、ATAのポリシーを啓もうしていました。整備工場のオペレーションを知るコンサルタントを入れたり、全国の優秀工場の社長さんに会いに行くなど東奔西走していました。
赤字を垂れ流していたことは間違いありません。しかし、皮肉にも村上さんが関心を持たなかったセルフ、PBのガソリンがキャッシュフローと利益を支えました。セルフ初期はお客が勝手にやってきました。価格ポリシーは「最低でも1ℓ粗利10円」で価格破壊を試行していないのに。サブ店時代の10倍近い販売量でした。
これがじっくりと自店を検証しながら、トライ&エラーの余裕を与えたことは間違いありません。
写真:米国EZ‐Lubeで。レンタカーを使ってオイル交換を見学させてもらった。熱心さは国境を越えて米人スタッフが仕組みを説明してくれた
COC・中央石油販売事業協同組合事務局