COCと独立経営<822>元売中期計画で雑感 – 関 匤

出光興産が「2050年長期ビジョンと中期ビジョン(2023~25年度)」を公表しています。

長期的には2030年を、事業構造をCN(脱炭素)へ目に見える形で移行し始める「転換期」と位置付けています。CNの新事業としてブルーアンモニア、合成燃料など「一歩先のエネルギー」、高機能材やバイオ化学など「多様な省資源・資源循環ソリューション」、そしてSS網をベースとする超小型EV、EV給電、MaaSなどの「スマートよろずや」の3軸で構成しています。
そして直近の3カ年計画では、合併のシナジー効果の最大化、国内燃料油需要減少への対応で利益目標の達成と財務改善を進めるとしています。

国内燃料油需要は2030年までに20%減少するという見通しの下に、「需要減に先行したコスト削減」という表現があります。元売にとって大きなコスト削減は精製能力の削減による高稼働率維持となります。

さる11月17日に連結子会社・東亜石油のTOBが成立して完全子会社となりました。2024年3月末に西部石油山口が精製を停止します。さらに2030年までに18万BD程度の精製削減を検討としています。

東亜石油のある川崎市扇島地区では、今年10月に出光興産、JERA、ENEOS、コスモエネルギー、東京ガス、東亜石油、JFEHD、東京電力HD、東京電力リニューアブルパワーの9社が「扇島町内会」を結成しています。牧歌的な名称ですが、地区の土地利用について連携を開始するということです。

以前から噂されていましたが、東亜子会社化によりENEOS川崎との精製統合が行われるかもしれません。そうなるとENEOSは根岸製油所を閉鎖するかもしれません。CNの観点からも不動産価値の高い再開発の観点からも可能性は高いと思います。
少し話がそれましたが、出光中計からは当面の2025年まで既存の精製・流通分野でかなりの大ナタが振るわれると感じます。それもスピード感を持って。

出光中計で25年の精製流通分野の「在庫評価除く営業利益+持分損益」を、22年度比で140億円増加としています。
増益のためには先述の精製効率(稼働率)に加えて、同社で最精鋭の分解能力を持つニソン製油所増産と、米豪での石油ジョバー増販を見込んでいます。中計に具体的に書かれていませんが、流通分野に関しては先述した「需要減に先行したコスト削減」がキーワードとなるでしょう。これは出光に限らず元売共通です。

SSで見た場合、元売がコスト削減で利益をあげるポイントは「物流効率化」と「SSネットワーク効率」にあります。
これは基地からタンクトレーラーで効率的に直送できるネットワークの密度と言い換えられます。前提は、無人化も視野に入れたセルフSSの最適配置になるでしょう。今後3年、本格的なSSネットワークの再編が進められるはずです。

米国の場合、1980年代から石油会社レベルで州単位の「エリアスワップ(交換)」が活発化して、物流非効率州のSSを他社にわたし、代わりに効率的な州でその他社のネットワークを受け入れる政策が展開されました。日本ではありえないと思いますが、出光系列では形を変えたスワップが始まっています。旧出光と旧昭シェル間の運営交代です。まあ同系列ですから特筆することもないでしょうが…。

そして従来の元売-特約店関係も変貌するはずです。セルフ無人化を想定すればCA契約(コミッションエージェント)が増えるでしょう。出光の場合、関係会社の出光スーパーバイジング社がCAを統括していますが、北海道から九州までエリアに販売課を配備しています。系列においては元売主導の効率化が推進されて、特約店が運営店に変貌していくのではないか、と感じています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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