COCと独立経営<824>成長の芽を摘んだのは? – 関 匤

大阪に行くたびに天王寺茶臼山パーキングを定点観測するようになりました。
パーキングにあるファミマ前のテスラ給電器の利用状況です。12日の月曜日午後に行ってみたら、やはり5基のうち3台が給電中でした。

コンビニ向かいのカフェも含めてスマホで動画撮影をしていたら、1台のドアが開いて運転者が降りてきました。知らずに勝手に撮影していたので、挨拶したところ、「興味ある?」と話しかけてきました。
テスラは仕事で使っているそうで、東京を往復することもあるそうです。茶臼山で給電して御殿場で30分ほど補給すれば、エアコン使っても全く問題ないと言います。早い段階で購入したので給電は無料です。自宅では40㎝角の40W充電器をガレージの壁に吊るしておいて、家庭用電源と接続して深夜電力で充電しているそうです。

帝塚山辺りの意識高い系の富裕層がEVを街中走行に使っていると思っていただけに、業務目的は意外でした。

ここでは向かいのカフェでお茶を飲みながら、スマホのアプリで給電状況を確認できます。また、パーキングに駐車して天王寺公園や動物園を散策しながら、新世界で有名な串カツを堪能できます。あべのハルカスで買い物や展望を楽しむことができます。
EVが増えるほどに、給電時間のストレスが少ない茶臼山のような場所が拠点となっていくのでしょう。

SSにも同じようなことが言えます。
日本でも知られるようになりましたが米国に「バッキーズ」(Buc-ee’s)という急成長企業があります。コンビニにカウントされていますが「トラベルセンター」という業態で、コンビニのカテゴリーを飛び越えています。
数年前、COCの有志がテキサスで見学してきましたが、感想は“たまげた!”でした。給油ポンプが120基もあります。米国コンビニ誌のランキングで全米一ガソリン価格競争力の高いコンビニです。

そしてコンビニのスケールがホームセンターか大型の道の駅並みで、商品は衣料まであってほとんどオリジナルです。店内飲食のレベルが高くきれいなトイレなど店舗管理もしっかりしていて、非常に高い人気を得ています。

調べてみたら、立地の多くがキャンプ場や河川に隣接しています。ドッグランのある店舗もあります。そして店舗でキャンピング用品やボートの貸し出しを行っています。店舗で買った材料でバーベキューを楽しめます。
給油してトイレを利用して飲料やスナック食品を買ってすぐ出発という目的買いではなく、バッキーズは時間を過ごす場所という価値を高めようとしているようです。そういう場所にエネルギー補給拠点があると考えれば、茶臼山パーキングに通じるものがあります。

私はSS業界に関わって以来、SSは楽しい場所にできないのかと考え続けてきました。

今の50歳以下の方には理解できないかもしれませんが、私が関わり続けた当時、SSは可能性を十二分に持っていました。相対的ですが、当時の小売店規模からいえばセールスルームには様々な商品が置かれていました。
カーステレオ、ミュージックテープ、お洒落なシートカバー、車内アクセサリー、各種芳香剤から腕時計にチョコレート、ガム、煎餅まで置かれていました。SSはコンビニの原型でした。

であれば、そこから進化型が生まれるのが小売業界の常識です。山口の商店街の小さな洋装店でブランド品を安売りした人がユニクロになり、群馬で家電のバッタ商売をしていた人がヤマダ電機になったように。最初は小資本でも成長を刻み続けるうちに大成長しました。

ふつうに進化していれば、SS業態として当たり前のように「茶臼山給電」や「バッキーズ」が台頭していたはずです。しかし残念ながら、コモディティのガソリン利権を叫んでいる姿を見るに、何年かのちに経営学のケーススタディで「成長の反面教師」として語り継がれることでしょう。
成長の芽を摘んだ要因は何か、と。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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