COCと独立経営<828>中小企業が再編成される予感 – 関 匤

1月23日の週、私ごときに問い合わせが何件か来ております。

某有力広域店が企業売却に出ている、というお話です。若い経営者が率いるローコストセルフ業態で、関西から始まって中四国、東海、北関東まで20数店舗を出店されています。私は全く接点がありませんが、WEB情報によると、経営者はトップ私学の理工系出身で企業再生ファンド、高級スーパー副社長などを歴任して実家のSS経営を引き継いでいるようです。

だから、付加価値を付けた企業を売却することはビジネスライクに判断できる人ではないかと勝手に想像します。
私はバブル崩壊のさ中に脱サラしています。考えてみると、日本の企業社会が再構築される時にありました。
例えば総合商社です。当時、三菱、三井、伊藤忠、丸紅、住商、日商岩井、ニチメン、トーメン、兼松の9大商社と言われていました。
そのうち日商とニチメンは合併して双日に、トーメンは豊田通商に吸収されました。兼松もバブル期には年商4兆円を超えましたが、原油取引の巨額損失以降に規模を縮小して、現在は年商8000億円の会社となっています。
ちなみに、私が大学に入った頃は10大商社と呼ばれていました。その一角であった安宅産業が、カナダでの石油精製事業の過大投資と債務隠しで倒産しました。好奇心で大阪横堀川の本社を見に行きましたが、ものすごい数の報道陣と野次馬に囲まれていました(私もその1人でした)。

安宅は住友銀行の仲介で伊藤忠に吸収されました。松本清張がこの事件を基に「空の城」という読み応えのある作品を書いています。後にNHKでドラマ化されて「ザ・商社」という大ヒット作品となりました。主演は山崎努と夏目雅子でした。
9大商社に次ぐ勢力として、金商又一、加商、野崎産業、川鉄物産、川鉄商事、住金物産等々、学生の有力就職先がありましたが、いずれも再編されています。

船場の名門商社だった伊藤萬は住銀出身社長が積極経営で総合商社に大飛躍しました。石油にも参入しましたが、業転取引で買うだけ買って「債務不存在事件」を引き起こしました。仕手戦と不動産投資で事件となり圧壊しました。
商社を一例に長々と書きましたが、バブル崩壊という戦後産業構造のいわば業態転換期にあたって、大企業が統合、退出してきました。街を歩いていて都市銀行の行名を見た時に、「この銀行って以前はなんだったけ?」と考えます。興銀、富士、第一、大和、東海、協和、埼玉、拓銀…この名称を知る人は年々少なくなっています。

最近のSS業界を眺めていると、大企業で起こっていたことがいよいよ中小企業に本格的に降りてきたなと感じます。
試しに「中小企業M&A」でWEB検索してください。仲介企業が佃煮にするくらいたくさん出てきます。「ガソリンスタンドM&A」でも相当数がヒットします。

話は全く余談となりますが、私がSS業界に関わりを持った頃です。少なからぬSSではセールスルーム内に机が置かれて、1人か2人のおばさんが事務を執っていました。接客スタッフが伝票を持ち込むと手書きで記帳していました。一方、POSと連携したオフコン(小型コンピューター)の導入が進んでいました。80年代にほぼ全SSが会計処理と顧客管理をシステム化しました。
私が関わり始めた時代は、大企業のシステム化が一巡して、コンピューターメーカーの戦略が中小企業の掘り起こしに向かっていた時代でした。

SS企業のM&Aを眺めていて、いよいよ大企業の再編統合が進んで、中小企業に向けてベクトルが向かっていると感じます。言い換えれば、多くの同族経営が後継者難と人材不足に直面しており、中小企業の構造が大転換するのではと怖い予感を覚えております。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206