COCと独立経営<851>「ビッグモーターは対岸の火事ではない」 – 関 匤

ようやく大手メディアが大きく報じ始めていますね。「ビッグモーター」の事件を。
昨年夏ごろから、一部経済誌が保険金不正請求を取り上げて、ネット上ではかなりの話題となっていました。また、動画サイトでは少なからぬ中古車販売業者が問題点を指摘して、数万から数十万PVと高い再生回数を示していました。しかし中央メディアがニュースにしていませんでした(私の知る限り)。

「ビッグモーターが大量の広告費を使っているからの忖度では?」と揶揄する声がネット界隈で上がっていました。しかし、ビッグモーターの広告塔になっていた俳優の佐藤隆太が「CM契約解除の方向」というニュースが出たとたんに中央メディアが盛大に報道を始めています。
ネットの意見と符合しているように思えてしまいます。

相次ぐ不正に一切口を閉ざし続けてきた会社が調査報告書を公表したこともありますが、今度は“水に落ちた犬は叩け!”のメディアスクラムが始まっています。それだけ悪質で組織的に行われてきたから仕方がありません。
でも、消費者被害をおもんばかれば、大手メディアはもっと早く報道しろよと言いたくなります。

ビッグモーターの公表では、昨年11月から直近まで事故や補修の保険金請求件数のうち15%に相当する1275件が不正と判明しました。総額5000万円、1件あたり3万9000円の不正請求額です。
昨年11月以前は不正がなかったのでしょうか。はなはだ疑問です。これだけ組織的に行われるのは企業風土と考えられます。

今年に入って、店長がスタッフにいかに巧妙に自然なタイヤパンクに見せるかを“OJT”している実態が、多くの画像とともに写真週刊誌で報じられました。ビッグモーター元社員たちの証言から、保険金水増しのために組織的に様々な手口が駆使されてきたことが判明しています。

「サンドペーパーやドライバーで車体に傷をつける」「靴下に入れたゴルフボールで叩き雹(ひょう)被害に見せる」「していないコーティングを請求」「中古部品を新品として請求」…。やられた顧客の保険料は上がるので、今後大変な社会問題に発展すると思います。

元ビッグモーター役員で自販業経営の中野優作氏は「社長が代替わりして数字にこだわる側近が増えて居づらくなった」と自戒の念も込めながら自身の動画サイトで述べています。数字=ノルマを追及する本社と現場に乖離が生まれ、ノルマ未達成の恐怖から現場で「ノウハウ」が生まれて組織的に共有されてしまったようです。
しかし、損保会社のアジャスターは機能していなかったのでしょうか。昔、軽い事故で自損した時のアジャスターは取調官のように厳しかったですが。
この事件を対岸の火事とは思えません。SS業界も消費者を裏切った「前科」を持っています。

ひところネット上で、SS油外販売に関する批判が凄かったことがあります。点検を頼んだらタイヤがパンクしていたという苦情が多かったのですが、某SSで意図的なパンクが刑事事件となって逮捕者が出ています。
ペーパー車検でこれも逮捕者が出た事件もありました。国民生活センターがHPで「SSでよくある苦情」を掲示しました。

行動原理がビッグモーターと同じように、現場と離れた元売や特約店経営者の数字に対するこだわりが強くて、現場スタッフに負荷をかけていたのではないでしょうか。
ガソリンが上がり続けています。前に書きましたが「180円」になれば確実に減販となるでしょう。利益確保に油外への変なプレッシャーが強まらないことを祈念しています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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