COCと独立経営<558>系列制度は数量格差で消滅した-関 匤

前回、数量格差が系列組織を破壊していることを家電系列店を例えにして書きました。石油業界も全くと言ってよいほど同じ状況です。

1980年代の後半に、フルサービスで500㌔㍑を販売するSSが出現して大変な話題となりました。96年に向けて段階的に規制緩和が始まった頃で、バブル景気の追い風もあって、元売・販売業界はガソリン量販にアクセルを踏みました。当時の商慣習で価格看板はご法度の掟がありましたが、現金カードの会員化と景品販促があいまって各地に量販SSが登場しました。家電業界で言えば、初期の量販店が生まれた段階に似ています。

ガソリン量販は96年に近づくに過激化して、今度はバブル崩壊の大逆風の中で業界は疲労困憊のまま自由化を迎えました。しかしこの段階で系列販売は維持されていました。

大きく外していないと思いますが、500㌔㍑超のSSは全体の5%、300―400㌔㍑が10%、150―250㌔㍑が20%、それ以下が65%…こんな数量構成だったと推定します。だから平均100㌔㍑前後に系列SS数のボリュームゾーンが形成されていました。

しかし、96年からの価格体系変更でガソリン利益の縮小=系列維持費用の減少、98年のセルフ解禁等による元売販売政策の転換が、系列を一変させました。低マージンで量販できるSSに傾斜したからです。だから「ガソリン指数」が系列SS評価の主役となりました。

そしてセルフ化で量販の概念が一転します。平気で1000㌔㍑を販売するSSが出現しました。500㌔㍑はふつうのセルフSSになりました。そして著しいセルフとフルとの「数量格差」が生まれます。

自由化・セルフ解禁から20年、かつて平均値にSS数のボリュームゾーンがありました。今は平均150㌔㍑ですが、極端に言えば500㌔㍑前後と100㌔㍑以下に分断されてしまって平均値にSSが存在しない状態と思われます。

マーケティング論文にメーカー系列店は、①店舗数、②自社製品への販促協力度、③価格維持機能によって成立すると書かれていました。家電流通で、この②と③のバランスが崩れた時に、系列店が家電製品販売において存在感を失いました。メーカーではなく流通の系列店としてCVSのFCがあります。彼らも、現状は日販65万円に大きな母数がありますが、仮に日販500万円業態が登場したら一気にバランスが崩れるでしょう。均等・同質化こそ系列店存在の要件といえます。

「系列内価格差」が問題になるのも、本質は「著しい系列内数量格差」にあります。ことに問題のらち外に置かれているのがサブ店です。OPISとか海外指標を持ち込んでも流通に二重構造があるので、サブ店さんの価格問題は改善しません。石油精製流通研究会も重要なこの部分に踏み込むどころか、完全にバックれています。

それなら「7割を占める零細店の苦境」など単に予算や補助金を取るための方便にしか聞こえません。特約店からサブ店まで仲間意識を持った麗しい系列は、消滅しています。サブ店は元売の身勝手なプログラムに乗らず、ウェブ通販や家電量販店の狭間で根強く生き残っている小規模家電店をモデルにした方がよいでしょう。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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