野球の話です。個人的にはラグビーワールドカップよりも、阪神タイガースの「アレの日」を心待ちにしておりました。
“アレ”とは岡田彰布監督の関西流の言い回しで、優勝と言うと心理的にプレッシャーがかかるので、曖昧な“アレ”と言ってきました。そして、この稿を書いているさ中にアレが「優勝」の二文字に変換されて、甲子園で岡田監督が宙に舞いました。
ここ7~8年の傾向ですが、阪神はドラフトで獲得した若手が台頭する状況が続いています。佐藤、森下と人気選手を獲得する一方で、下位指名選手や育成選手が活躍しています。WBC代表の中野は5位指名、6位指名の湯浅は独立リーグ出身です。森下と交互に使われる小野寺に至っては育成ドラフト選手です。
ドラフト戦略が見事に功を奏しています。近本が1位、小幡が2位、木浪が3位、湯浅が6位のドラフト指名時に、スポーツマスコミから酷評されました。彼らは即戦力となり優勝の原動力です。
FAの大物や外人に頼らないチームの編成方針とスカウトの調査力がうまく噛み合っているのでしょう。
阪神ネタを書けばキリがないのですが、当業界に目を転じれば、石油需要が構造的に縮小する中において、全石連が大好きな「再投資可能」を実現するためには「新人の育成」をするしかありません。
歴史的に見て、SSぐらい“人は人財だ!”と叫びながら、実態は人を使い捨てしてきた業界はないでしょう。しかし、事ここに至っては人材の起用方法と育成をしながら(たとえ小商売であっても)本当の意味での次世代業態を作り上げるしかありません。過去に先送りしてきたことが一気に顕在化しているように思えます。
SSの給油サービスに影響を与えるモーダルシフト(自動車移動体の変動)ですが、顕在化するのは早くても2030年以降と見られます。
となれば10年先を見据えて戦略(阪神なら編成方針)を考えられる時間的余裕があります。阪神に無理やり置き換えれば、業態再編成に向けてどういう選手(人材)をどう育成強化するか、これが10年後に結実するでしょう。もちろんSSにこだわることなく、時代変化に対応したビジネスへの転業あるいは出口への着地点の模索も含めて、これからの10年が意味を持ちます。
で、不都合な真実です。
ハイブリッドやPHVを除く純電動のBEVが新車販売を伸ばしています。自販連統計で今年1-8月の販売台数が出ていますが、合計してみると2万8,675台です。過去最大に売れた2022年の同期が2万9841台なので、今年は8月時点で前年実績に並んだ格好です。
半分の月で前年比200%を超えています。月4000台超ペース売れていますから、今年(暦年)は4万台の後半に到達することでしょう。
この数字がどういうものかと言えば、ハイブリッドのプリウスは2009年以降のエコカー減税で月販2~3万台に躍進しました。現在のBEVは2005年、06年頃のプリウスの販売ペースに匹敵します。
BEVはすでにエコカー減税や国庫自治体による補助金という推進力ありの数字ですから、2009年以降のプリウスよりは緩やかな増加が考えられます。それでも増加するほどに市場が拡大するので、それに比例して技術革新への投資も増加します。
冒頭の野球ネタに無理やりこじつければ、日本のBEVは2015年頃の阪神タイガースといったところです。その後の地道なドラフトと育成が「アレ」に結実したように、BEV市場拡大とともに日本のモノづくりが革新をもたらすかもしれません。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局