COCと独立経営<865>神の見えざる手 – 関 匤

嫌なニュースが出ました。業界への風当たりが強くなりそうです。長くなりますが引用します。

「給油所だけもうかって、消費者には還元されなかったのか」。
8日、X(旧ツイッター)では批判の声が相次いだ。
発端は検査院が7日に公表したガソリン価格の補助金調査の結果だ。「支給に相当する額が小売価格に反映されていない可能性がある」と指摘した。…実際に交付された補助金の額とガソリン販売数量から推計した抑制額でも約101億円の差が生じており、検査院は「小売価格の抑制に寄与しているのか不明」と結論づけた。
これに対し、給油所の業界団体である全国石油商業組合連合会(全石連)の森洋会長は「補助金で給油所が不当にもうけているといった指摘は事実に即しておらず、不本意だ」と反論する。(日本経済新聞)

会計検査院による指摘を整理すると、
①(同院の700SS調査によると)補助金開始の昨年2月から今年3月までと前期を比べて、卸しと小売価格の差がリットル1.6円拡大していた。
②調査SSの7割で利益が拡大していた
③62億円を投じた広告代理店による2万SSへのモニタリング調査と、資源エネ庁の2000SS価格調査の内容が重複し、検証にも使われていない
ということです。

どんな商品でも、メーカーや原産地の出荷価格が小売価格までの流通経路の中で利益、手数料が加算されていきます。その時々の需給や競争状態によって、利益は変動します。
最近は、円安による国内物価高に人件費の高騰もあって、様々な商品価格が高くなっています。価格は変わらないけれど荷姿を小さくする“ステルス値上げ”も見られます。私のような酒好きには飲み屋の客単価が以前より500~1,000円高いと実感しています。

ガソリンの場合、2022年度は上げ基調できました。補助金を差し引いた差額分が毎週のように値上げされました。その分、小売価格が上げとなります。ただ面倒なのは値上げ額が「1円50銭」とか「2円50銭」という金額です。
「銭」という通貨は流通していないので、小売価格への反映は、切り上げか切り下げです。損するわけにいかないので、多くのSSは切り上げしたでしょう。それが毎週行われれば、積もり積もってSSによっては利益を蓄積する結果になったと考えられます。

ガソリン小売価格のことを云々かんぬん言うのは好きではありませんが、以前拙稿で書きましたが、補助金の前提となる「小売価格の捉え方」には私も疑義を呈していました。

資源エネ庁が石油情報センターを介して収集する価格情報、広告代理店のモニタリング調査ともに、「市況の傾向」を時系列に見るためには参考になるでしょう。しかし、実勢価格とは到底思えません。実勢価格を算出するには、
①店頭価格、会員価格、クレジット価格、掛け売りなど決済別の価格
②ガソリン販売量
③以上の加重平均による実態価格
をSSごとに調査する必要があります。

さらに調査SS全体の加重平均を出さないと本当の価格は見えてきません。
私は生活物資であるガソリン価格の沸騰を抑えるための臨時的な補助制度はありと思います。しかし、市況商品は“神の見えざる手”で動くものであり、前提条件の立て方を誤ると当初の意図と違って、見えざる手が思わぬ方向に動きかねないものでもあります。
だから、業界として言い分はいっぱいあろうとも、会計検査院の見解を多くのメディアやSNSで拡散される状況となっています。これも神の見えざる手です。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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