ガソリンの価格競争って、今から思えば自由化以前の方が激しかった印象があります。なにしろ資源エネルギー庁策定の「ガソリン高中間品安」という“国際非常識価格体系”のお陰で、系列は事後調整に販促補助、独立系は業転安があって、時々、底なしの価格戦争が起こりました。
それに比べれば、自由化後数年の混乱期はありましたが、ガソリン市況は商圏特性や地域性を反映しながら、(自由化前に比べれば)この地域はこうなんだと何となくすみ分けができているような感覚を持っています。
それよりも、ピーク時に比べてガソリン販売量が約3割減少しています。安売りのコスパが下がっています。セルフSSの普及が大きいと思います。セルフ同士の競合は一定レンジの価格幅に収れんされる傾向がありますから。ただし、利益商品の車検や車販見込み客を呼び込むガソリン価格対応はありでしょう。(もちろん局地的な要因により様々な価格は存在しますが)
全く気が付かなかったのですが、5月に公取委が「給油所の競争状況に関する地域別実態調査結果」なる報告書を出していました。
「調査趣旨」として、
①ガソリン小売価格が全国平均に比べて継続的に低い地域を中心に
②異業種からの新規参入を踏まえつつ
③特定の地域を選定し実態把握を実施
とあります。
「特定の地域」とは、埼玉県三郷市、千葉県千葉市、千葉県木更津市、神奈川県厚木市、静岡県浜松市、岡山県岡山市・倉敷市、山口県下関市の8つです。
調査目的は、
①販売価格の設定方針
②地域の販売価格に対する認識
③競合店の低価格販売への対応状況
④不当廉売規制に対する理解
ということです。
そもそもこの8地区はどういう選択基準で選ばれたのでしょうか。報告書に「異業種からの新規参入を踏まえつつ」とありますが、半分の都市がコストコの影響圏にあります。ここを狙ったのでしょうか。
gogo.gs価格サイトで見ると、7月18日の全国平均172.7円に対して、
①木更津市 167円
②千葉市(4区平均)167.3円
③三郷市 165.6円
④厚木市 167.3円
⑤浜松市(3区平均)177.5円
⑥岡山市(4区平均)170.4円
⑦倉敷市 162.7円
⑧下関市 175.8円
三郷や倉敷のように競合地域もありますが全国平均より高い市もあります。どうして8地区を選択したのでしょうか。
報告書は、
①低価格訴求者の8割強がコストより競合店価格を重視
②不当廉売を意識していないが1割強
③低価格訴求者の5割強が不当廉売規制の内容を意識していない
として、当該地区事業に不当廉売規制の啓蒙を行う旨述べています。そして「今回の調査結果も踏まえ、ガソリン等販売業における公正な競争を確保するため、引き続き、市場における競争状況を注視していくとともに、個別の事案に対して厳正に対処していく」と締めています。公取委は「ガソリン価格取締委員会」になったようです。
独禁法を啓蒙するならば、「私的独占の禁止」「不当な取引制限(カルテル)の禁止」「事業者団体の規制」「企業結合の規制」「独占的状態の規制」「不公正な取引法の禁止」「下請け法に基づく規制」も併せて徹底すべきでしょう。(案外横行しています)
最後に公取委は独禁法の目的に関してこう述べています(要約)。「事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。市場メカニズムが正しく機能していれば,事業者間の競争によって、消費者の利益が確保されることになります」
COC・中央石油販売事業協同組合事務局