前回、「メーターセールス復活を!」と書いたら、案の定「それ何ですか?」とか「そんなことできるのですか?」と聞かれました。
それ何ですか? は前回の拙稿を読めば分かります。できるのですか? は、実際に1980年まで元売会社が当たり前にやっていたのだから可能です。元売が再びやるか、やらないかだけのことです。
元売は供給を油槽所から陸送まで縦系列化を着々と進めていますので、系列店の業転買いは10年前、20年前に比べて激減しているはずです。(元売と一部特約店の阿吽の呼吸はあるやに聞きますが)
ならば全品自動送り込みでSS地下在庫を元売在庫にすれば良いのです。その方が、安定供給責任も明確になります。系列店に限っては「緊急時対応」のインフラは(一応)格好がつくので行政もやりやすいことでしょう。「SS過疎地」のポータブルみたいなSS在庫まで元売が責任を持ってくれますから。
ところで、冒頭のような質問を受けて思うのですが、石油業界では過去が現在に継承されていない。「石油流通史」が存在していないのです。
桃山学院の小嶌正稔教授著「石油流通システム」は私のバイブルでもあり、きちんと過去が描かれ検証されてもいます。流通をきちんと体系的に描いたのは、私が知る限りこの一冊だけです。でも、石油村の方々がきちんと読んでいるとは思えません。そういうことに興味、関心がないのでしょうか。
私は四半世紀前に思わぬ縁でコンビニ業界の仕事に関わったことがあります。内実は何も知らない業界で困惑しました。しかし、多くの書籍があり、聞けば教えてくれる方々がいました。
セブンイレブンが日本初のコンビニと思っていたのですが、実は1960年代前半に一号店が登場しています。ダイエーやダスキンも出店しています。この時点でコンビニという概念を日本の流通経営者は認識しており、小売新業態にチャレンジしたのでしょう。
この時代、米国の先進的な流通に高い外貨を払ってでも渡米して話を聞き、さまざまな情報を得たうえで実践していたのです。そして日本のコンビニの原型を作ったのは、セブンの3年前の北海道のセイコーマートと言われています。セコマの役員にお会いした時に、「コンビニPOSも当社が先駆けだ」とセブンのPOSを持ち上げるメディアにお怒りでした。
石油でも米系のモービル石油がモービルマートを1970年頃に投入しています。同時代の米国SSが給油のワンストップで食品飲料主体の新業態を開発していたからです。モービルマートは石油系にマーチャンダイジングの荷が重かったと、モービル社員に伺ったことがあります。
流通系では、専門メディア、コンサルタント、研究者らが、戦前の商店街からの記録とビジネスモデルを検証し、体系的に流通史を様々な角度から残しています。これが「遺産」となって、小売業を進化させてきました。
翻って石油村では、余りにもガソリンに過剰適応して政治商品化したことで、ビジネスモデルの検証がないがしろにされてきたのではないでしょうか。
だって、80年代から元売は「実験店」を佃煮にできるくらい数多く投入しては、その顛末はあやふやなままです。失敗を分析、検証しないから同じことを繰り返します。まあ、あまり検証すると言い出しっぺの役員さんの顔を潰すからかもしれません。
「次世代」を簡単に口にしますが、むしろ過去にやったことを洗い出して、なぜどうして失敗したかをきちんと検証した方が、次世代のタネが見えてくるかもしれません。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局