COCと独立経営<910>今まで何やっていたのか?「E20」 – 関 匤

与党過半数割れの国会でキャスティングボートを握った国民民主党が「ガソリン税のトリガー条項凍結解除」を政策に謳っています。
「政府は11月にもまとめる経済対策の原案に、ガソリン価格を抑える補助金について支援額を縮めながら継続する方針を盛る。2025年以降も続くことになる。」(日本経済新聞)
これに対して、国民民主党の玉木雄一郎代表は、「ただただ補助金を続ける。代替措置もないのに段階的に縮小するだけなら全く受け入れられない」(日経)と批判しています。

トリガー解除には「2008年の悪夢」が甦ります。1ℓ25円も違うのですから、解除月初にオーダーが集中します。
COCの立場で心配するのが、08年以上に元売供給体制が「系列主体」となっていることです。独立系への供給が後回しにされる可能性があります。また、済度取引の系列店は高値仕入れ分の代金を解除後の25円安の売上げ代金で支払うことになるので、資金繰りに苦労します。
トリガー解除するなら、こういう実務面の混乱回避の視点を持って政策実行を考えてほしいものです。


さて、こんな記事が出ました。
「全新車、バイオ燃料対応に CO2削減へ30年代目標―経産省」(時事通信)

経産省が、2030年までにバイオエタノール20%混合の「E20ガソリン」に対応するエンジン車新車開発を自動車各社に要請したということです。
「エネルギー基本計画」が来年2025年に更新されますが、時事以外のメディア各社も後追い記事を書いていますから「E20」が計画に盛り込まれますね。
でもエタノールって、環境を考慮した再エネとして古くて新しいテーマです。21世紀に入ってからBRICSとりわけ中国とインドが急激な高度成長で原油をがぶ飲みし始めて、価格もまた急騰しました。それもあって代替エネルギーとしてエタノールが脚光を浴びました。
COCでも関心が高くなり、研修会のテーマとして様々な講師をお呼びしました。

油業報知新聞に寄稿する元エッソ石油常務の西尾直毅氏もその1人です。西尾氏は2006年、専売公社廃止で民営化された日本アルコール産業の初代社長に就任しました。
研修会で西尾氏が「ガソリンが漏洩したら大問題だが、エタノールは地下水に漏れても“水割り”が出来るだけ」と笑いを取ったのを覚えています。この講演で刺激を受けたCOCのPB店が、環境省の事業でE3ガソリンを開始し現在も継続しています。
また、2008年に沖縄の南西石油をブラジル国営のペトロブラスが買収して、ブラジルからサトウキビ由来のエタノールを輸入して「E3ガソリン」の供給を開始しました。COCではペトロブラスの日本合弁法人日伯エタノールの日系ブラジル人幹部を研修会に招待しました。
ブラジルのサトウキビ由来アルコールのビジネスモデルは素晴らしいと思いました。
砂糖をまず生産して、その副産物である糖蜜を熱処理してアルコールを生産します。テキーラなどお酒になるし燃料にもなります。
米国ではトウモロコシを原料にしていますが、これは食料か燃料かの一択を迫られます。現実にメキシコで食糧危機が起こりました。一方、ブラジルの場合、副産物を使用するので砂糖の需給への影響は軽微です。
熱処理の燃料には、サトウキビの搾りかすを乾燥した「バガス」を燃やします。燃料を輸送するローリーも農耕機械もアルコール燃料です。良く出来あがったリサイクルには感じ入りました。


20年近い昔の話です。この時間を政府・経産省が本気でエタノール燃料に費やしていたら、国内でのアルコール原料開発と生産のビジネスモデルが出来ていたかもしれません。
日伯幹部と出会った当時、ブラジルではすでに「E100」で車が走っていました。
私のような下衆な人間でもEの比率がCO2排出を左右することを知っていましたから、「今からE20の準備かよ~?」の感があります。「2030年から新車でE20」と言いますが、トヨタも日産もブラジルで売る車は20年前に「E100対応」しているはずです。
やろうと思えば(燃料があれば)来年からでも可能ではないでしょうか。
途中で実効性(投資利回り)の低い太陽光やFCVに巨額の補助金を費やす政策に“浮気”した結果、今になって「E20の2030年目標」ですか…。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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