vol.665『EV社会前夜』

月6日、仏マクロン政権が、2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止すると発表した。現在、フランスの自動車生産台数のうち、電気自動車(EV)は1.2㌫、ハイブリッド車(HV)も3.5㌫、に過ぎず、ガソリン車・ディーゼル車のシェアは95.2㌫。これを、いまから20年あまりで「ゼロ」にしようというのだから、相当野心的な目標といえる。

また、ドイツでは、まだ上院だけだが、2030年までにガソリン・ディーゼル車販売停止を決議しているし、オランダやノルウェーなどでも25年ごろを目標に同様の動きがあると報じられている。アジアではインドで、担当大臣が「30年までに販売する車をすべてEVにする」と発言したらしい。

しかし、EVにもっとも熱心な国といえば中国。火力発電と排ガスで致死的ともいえる大気汚染に見舞われている中国では、普通のハイブリッド車はもはやエコカーとは認めず、助成措置をEVやPHVなどのエコカーに絞るなどして、EVの普及を加速させているという。一方、日本では2016年度までは、新車の9割が「エコカー」減税の対象となっていた。それだけ聞くと、日本はすごい環境先進国のように思えるが、実際には、自動車業界保護(経産省の天下り先保護?)のために、“なんちゃってエコカー”に対しても、片っ端から減税措置を施してきただけのことだということは周知の事実。

中国はHVとEVの世界最大のマーケットで、昨年の販売数は約35万台。ヨーロッパの22万台、アメリカの16万台を大きく上回っている。中国の自動車メーカー「ジーリーグループ」の傘下にある「ボルボ」が、ガソリン車の生産を段階的に廃止し、2019年以降に発売するすべての車種をEVやHVにすると発表したのも、「EV大国」を目指す中国の戦略の一環だろう。それに比べると、日本は世界のEV化の流れに乗り遅れているというか、乗り気がないというか…。

国産EV車の評判もよろしくない。日産「リーフ」の中古車価格が激しく下落しており、2011年や2012年の初期モデルは30万円~40万円だという。新車時に325万円した2016年モデルですら110万円台で購入可能らしい。その理由は、バッテリーの性能の劣化。初期型のリーフで言えば、新車時に160kmほど走れたもののが、いまでは100km以下になってしまったものがざらだという。バッテリー交換費用は50~60万円もするそうだから、中古車価格が下落しても仕方がない。そんなこんなで、早くも「EV離れ」が始まっているとの見方もある。

とはいえ“日本はまだまだ「ガソリン車天国」。国内のGS業界は当分安泰”と喜んでいてはいけない。前述のとおり、世界の潮流は「EV」。この先、EVが増えることはあっても減ることはない。画期的な技術革新によって一気に増える可能性もある。そうなれば、急速充電のできる施設も急ピッチで拡充する必要がある。そこに、GS業界の参入する余地はないだろうか。

いまのところ、EVが抱える最も大きなデメリットは、充電時間。自宅に専用充電器を設置できる家は、全世帯の何㌫ぐらいだろう。ほとんどのEV運転車は、運転中に立ちよることのできる専用施設を必要とするはずだ。365日24時間営業していて、自動車が一度に何台も簡単に出入りでき、安全に充電できる施設といえば、やはりGS。GSは、EV社会においても、クルマ社会を支えるインフラとしての役割を果たす可能性大である。実際、海外の某メーカーが、代理店を通じて、日本のセルフGSに充電器を設置して、EVに販売したり配達するビジネスができないかと相談を持ちかけてきた。

どのみち、石油元売が役所やメーカーと結託して基準や規制を作ることになるのだろうが、GS業界もいろいろ研究して、ローコストで独自のEV充電ビジネスを立ち上げることができるかもしれない。研究の第一歩として、とりあえず格安の中古「リーフ」を購入して運転してみようかな…。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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