COCと独立経営<922>昭和の独禁法破りは破壊力が違う – 関 匤

長野県石商支部の「ガソリン価格談合疑惑」ですが、公取委の調査が入りました。WEBの動画にも出ていますが、複数のテレビ局の取材でSS関係者が「連絡網」を証言しています。非石商のJAにまで連絡がきたとJA関係者が明言しています。さらに信濃毎日新聞社が音声データを持っています。

そもそも独占禁止法という法律は石油産業が作り出したものです。19世紀に全米の90%というとんでもないシェアを持ったスタンダードオイル(現エクソンモービル)に対して、連邦議会が「取引を制限する全ての契約、結合、共謀」を禁じるシャーマン法を制定します。1911年に最高裁からスタンダードオイルに解体命令を出し、同社は34社に分割されます。

私が業界に関わった頃、エクソン、モービル、ソーカル、コノコ、アモコ、旧Jエナジーと提携してコンビニの「AMPM」を展開したアルコといった旧スタンダード系の大手石油会社が存在していました。スタンダードは凄い会社だったのですね。

「独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。市場メカニズムが正しく機能していれば、事業者は、自らの創意工夫によって、より安くて優れた商品を提供して売上高を伸ばそうとしますし、消費者は、ニーズに合った商品を選択することができ、事業者間の競争によって、消費者の利益が確保されることになります。このような考え方に基づいて競争を維持・促進する政策は『競争政策』と呼ばれています」(公正取引委員会)

独禁法生みの親である石油は、コモディティとして高い流通性と金融的価値が高いこともあって、カルテルや独占へのインセンティブが高い商品と思います。
なにしろ石油価格の“胴元”であるOPECプラスって明らかに価格カルテル団体です。信濃毎日新聞はこっちを狙った方が面白いですね。


話は変わりますが、アナログ時代を経験している私にとってITの進化と利便性を本当に実感しています。昔は霞が関に資料1枚貰うために足を運びました。接客の概念を持たない役人に嫌な顔をされながら頭を下げて資料を頂きました。今はHPの統計データから好きにダウンロードできます。

国会検索は面白いですね。戦時中の東条英機の答弁も読めます。1977年5月には衆院物価問題等に関する特別委員会で「石商とガソリン価格」に関して、生々しい質疑が行われていました。物価に厳しい共産党の藤原ひろ子議員です。

「東京都台東区の(安売りの)佐藤商店に、東京都石油商業組合台東支部北部十七日会の人たちが14~15台の乗用車やライトバンで押しかけ、5リットルずつ給油させ1万円札を出しておつりを請求するなどいやがらせを行い、退去を求めた店主と乱闘になる事件が起きました…事件の発端が価格カルテルにあると私は考えます」(要旨)
具体的に日時を挙げて、佐藤商店の「値引きチラシ」問題を、石商に卸元はおろか元売まで一緒に協議した事実を暴露しています。佐藤商店の“値引き撤回チラシ”を石商が勝手に作って配付するという、偽チラシ作戦という高度かつ何でもあり~をやっていたとか。新聞沙汰になりました。

公取委事務局審査部・野上正人部長は「(事件の)新聞記事も妨害行為を行っているということも承知しております。関係者から事情聴取して、できるだけ早い機会に事実を確定して法律の適用を検討いたしたい」という旨で応答しています。
明らかに独禁法の「事業者団体の規制」に抵触します。「事業者団体による競争の実質的な制限、事業者の数の制限、会員事業者・組合員等の機能又は活動の不当な制限、事業者に不公正な取引方法をさせる行為等を禁止」(公取委)です。

しかし「5リットル給油で万札行列」とは迫力ありますね。さすが昭和時代です。独禁法への「自爆テロ」ですが。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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