15年ほど前、興味があって農業のセミナーに出たことがあります。
主催はNTTファシリティーズという会社です。農業のIT化をバックアップするという彼らの事業紹介の目論見でありましたが、非常に面白い内容でした。農業の産業化が言われ始めた頃でもあり、古くて新しい分野と実感しました。
COC会員は地方に分散しています。井の中の蛙に安住する石油村よりも、農業分野で独立精神を発揮できる可能性を感じていました。実際に農業分野に参入する会員がいたこともあります。
ただ、農業の世界は外からよく理解できない閉鎖的な構造になっているようです。米の高騰が収まらないのですが、メディア報道では何が根幹の原因なのかよく理解できません。
書店でたまたま新書を見付けました。「コメ高騰の深層-JA農協の圧力に屈した減反の大罪」(宝島社新書)です。筆者は元農水省官僚(農村振興局次長)の山下一仁氏。
農政、JA農協、族議員は利益共同体として「農政トライアングル」と非常に厳しく批判しています。そしてコメ不足の元凶は「減反政策にある」とします。
コメは江戸時代に大阪堂島で先物取引されたようにコモディティであり、価格は需給によって決定します。売りが少なく買いが多いから必然的に価格は上がります。
山下氏は「減反とJA独占によって公正な価格形成が妨げられている」と述べます。
① 減反により生産供給が減少
② 競争的市場経済ではない
③ 独占的集荷業者であるJAが事実上供給を支配
④ 米の取引価格を形成するための市場として機能していた穀価格形成センターは自主流通米の価格形成に重要な役割を果たしていたが、(JAによる)取引量激減で閉鎖
⑤ 減反は宅地転用等で農家に利益をもたらしJAは受け皿として巨大金融機関となった
⑥ 減反は食糧安全保障と完全に矛盾する
⑦ 一般人は農家=零細と勘違いしている(兼業農家が多くサラリーとのダブルインカムなど一般人より裕福)
等々限りがありません。
加えて、水田は優れた環境システムであり、小麦よりはるかに高い単位当たり収穫量があって、洪水防止と水資源の涵養の機能を持つ「国産資源」であること。ここに減反政策は食糧安全保障と完全に矛盾していると述べています。
と、この新書を読んでいて「既視感」を覚えました。「これって石油業界のことじゃないの?」です。
農政トライアングルに対して、石油トライアングルが存在します。
自由化当初から活況を呈していた石油先物取引でしたが、今は閑古鳥の日々です。製品輸入も主役は商社から元売になりました。
SS企業の実態は農家と同じく「兼業」が大部分を占めています。なにしろ事業を始めるには多額の資本と土地が前提条件です。SS企業はもともと「土地持ち」であり、ガソリンが少々儲からなくても安定した不動産収入を得ている方々が少なくありません。
農業といい石油といい、村社会の業界は似た構造になるものと感じた次第です。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局