COCと独立経営<945>セルフSS40%突破時代に思う – 関 匤

石油情報センターの2025年3月末現在のセルフSS数調査が出ています。

1万915カ所で、同月のSS総数が2万7009カ所ですから、日本のSSの40%超がセルフになっています。
1998年度に解禁されて2000年度は400カ所でした。以前に書いたかもしれませんが、前年の11月に某価格調査会社(現存しませんが)主催の、セルフSSの今後に関するパネルディスカッションがあって、主催者と懇意にしていた私に進行役の白羽の矢が立ちました。
自慢じゃないですが、私は露払いで20分ほど話をした際に「現在セルフSSは300カ所を超えた。来年には3倍以上になる」と述べました。翌21年度に1300カ所を超えたので“大予想的中”ではありますが…。


ただし、私なりの根拠がありました。当時、商業系の雑誌でコンビニ主体に取材記事を書かせてもらっていました。過去の面白い資料が豊富にある出版社だったので、日本の商業史をかじることができました。
かの業界では石油と違って、戦後の日本流通業界はセルフと共に進化したと、当たり前のように論じられていました。
セルフはスーパーマーケットから始まりました。「スーパー」という概念すらなく、商店街では八百屋、魚屋、肉屋、乾物屋といった「業種店」を買い物籠下げた主婦が買い回っていました。相対の接客で、店主の気分次第でオマケが付いたり付かなかったりと、個別客別に対応に温度差がありました。

スーパーは業種店を1つの店舗に集約して、客がセルフで商品を選んで最後はレジで一括精算します。主婦はスーパーの登場によって、相対接客の不平等から平等な接客を享受できるようになりました。
スーパー1号店は東京青山の紀ノ国屋ですが、これは進駐軍のPX(専用購買所)でした。1956年に九州の八幡製鉄購買所に本格的なスーパーが登場し、一般客も利用できて大変な好評を博します。これが嚆矢となり専用レジを開発した日本NCRの営業マンが伝道師となって店舗開発に動きました。

前置きが長くなりましたが、1958年にセルフサービスのスーパーが300店を超えます。その翌年に900店に達しました。この事実が、私の予想の根拠でした。当時の資料を読むと、既存の商業界からは「セルフは万引きが起こる」「老人や女性には不便だ」「日本の商慣習に馴染まない」等々の“セルフ反対論”が渦巻いていました。
1999年当時の石油業界は全く同じことを言っていました(声の大きい人たちですが)。セルフに対する拒絶反応は凄まじく、元売社長から全国石商幹部まで、連日業界紙で犯罪者扱いの論を張っていました。
「石油業界はふつうの小売業界に比べて頭の構造が半世紀遅れているんだ」と実感すると共に、すでに営業中のセルフSSが大きな集客力を発揮していたこともあり、顧客ニーズにも適合していました。他業界の受け売りながら「3倍になる」と発言しました。


今や店舗シェアでセルフが4割となりました。県別に見ると、神奈川県は58.4%です。埼玉県、福岡県、愛知県、石川県、大阪府が50%超です。販売シェアは80~90%に達しているでしょう。
ただし、本当に石油業界が変わらないのが「ガソリン真理教」です。給油から解放されて、ヒト・モノ・カネを利益事業に傾斜すべきなのですが、ガソリン補助とか暫定税率ばかり論じています。
セルフのスーパーは高度成長期に大ブームとなりましたが、“スーと現れパーと消える”と揶揄されました。そこから生き残った人たちは、レジがセルフ化した余力を商品力に傾斜させました。現在、SCで超大型店舗を構える大手が全国に幅を利かせる一方で、生鮮に特化して核店舗のスーパーとして魅力を高める企業群が存在します。

給油のセルフ化とは、ガソリンだけじゃない店舗の集客力を高めることが大目的であったはずですが。

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