COCと独立経営<946>29年度の需要と安定供給 – 関 匤

今年ほど石油業界と独禁法の抵触が続くのは珍しいですね。
「東京都内の法人向け軽油の販売価格についてカルテルを結んだ疑いが強まったとして、公正取引委員会は10日、石油製品販売会社8社に独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で強制調査に入った。関係者の話で分かった。公取委は検察当局への刑事告発を視野に実態解明を進める」(日本経済新聞。要約)

軽油のフリート業者絡みでは、5月末に価格カルテルの疑いから神奈川県で6社に対し、公取委が立ち入り調査に入っています。本稿で「フリートビッグ6」と書きましたが、東京では2社増えています。東京は「強制捜査」なのでいわゆる令状を持った“ガサ入れ”で、資料類を精査されます。

軽油取引に詳しい人によると、「積極的に価格談合している認識は無かったのでは…」と言います。買い手売り手の大手同士が丁々発止するチャンピオン交渉をやっていたそうです。売り手が価格談合したうえで個別需要家に価格提示していた訳ではなく、一応、需要家納得(していたかどうか不明ですが)の納入だったとか。

取引実態を知らないのでこれ以上勝手なことは書きません。ただ、強制捜査とは厳しいですね。


話は全く変わりますが、今年4月末に資源エネルギー庁の需要想定検討会が、2029年までの国内石油需要を推定しています。
24年度実績に対して、
①燃料油合計 ▲10.5%
②ガソリン  ▲11.4%
という想定が出ています。5年間でさらに10%以上も国内石油市場が縮小するということです。もちろん想定通りになることはありませんが、中期的な経営判断として押さえておく必要があります。

ENEOSの決算で例えれば、短信のセグメントで石油売り上げは約11兆円あります。売価が同じとすれば、29年度の売り上げは1.1兆円減収します。この数字はセグメントにある石油・天然ガス開発、機能材、電気の3つの売り上げに相当します。
元売会社は売り上げの9割以上を石油に依存しています。想定通りに需要が減少すれば、大企業だけに10%の重みが重圧となります。
元売はエネルギーのすそ野を拡大する動きは活発ですが、ガスや電力は大企業が君臨しており、再生可能エネルギーは大小さまざまな企業の乱戦状態です。元売がペースメーカーになれるとは思えません。

出光興産は中期計画で「30年までにさらなる精製削減」を明記しています。またENEOSは宮田社長が8月の日経新聞のインタビューで、「(精製廃止は)少なくともこの先3年はない。30年までないとは言い切れない」と微妙な発言をしています。


単純に29年度の燃料油10%減を精製能力に当てはめると「▲30万BD」となります。2~3カ所の廃止となってしまいます。製油所の廃止=油槽所化は、独立系にとって安定供給を妨げます。
内航船の横持ちとなり、台風や時化で運航が不安定となります。西日本で現実に起こっていますが、独立系は後回しで玉繰りに苦労します。平時にこんな状態で良いのでしょうか。

資源エネルギー庁の「全国SS過疎市町村」なる資料があります。SSがゼロだ!1カ所しかない! と騒ぐ材料になっていますが、ここには独立系もカウントされています。
SSゼロで騒ぐよりも、SSがあるのに安定供給できない大元の仕組みこそしっかりと「基盤整備」していただきたいものです。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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