前々回でJXTGのSSブランド統一に触れました。同じマークが連なれば、立地・設備に恵まれたセブン―イレブン併設店にカード客から流出すると書きました。
仄聞するに、どうもこの業態がブランド統合後のモデルSSになりそうです。旧JX系SSで要件を満たせば、秋以降にも登場しそうです。
元売がセブン業態を本格導入すれば、SSに関して従来の石油系列関係は根底から覆ります。特約店制度とコンビニの厳格なFC契約がどう折り合いを付けるのか。私はCA(コミッションエージェント)が主流になると考えています。
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さて、話は全く変わります。LNG取引で公正取引委員会が興味深い見解を出しました。これはイコールLNGについての政府見解になります。
私も詳しくないのですが、LNGは米国、豪州、マレーシア、中東などの主要5社の供給企業が世界シェアの60%を占めています。一方、日本では東電、東ガス、中電、関電など電力・ガス事業者五社が、国内総需要の80%を占める需要家です。
公取委が見解を出したのは、供給会社による需要家に対する「仕向地の縛り」が競争制限的な行為であるということです。
LNG取引形態は2つあります。1つは「DES」といって供給会社が約定の仕向け港まで運搬します。SSなら元売の持ち届けです。もう1つは、「FOB」。需要家がタンカー用船して供給会社の出荷基地で受け取る方式です。SSなら倉取りです。
外国相手ですから入着までタイムラグがあります。その間に需要家側の事情で、例えば東ガスが仕向地の日立港を袖ヶ浦に変更することは起こり得ます。あるいは、国内消費が低迷して余剰を他国に転売する可能性もあります。
そこで公取委が問題視しているのが、供給会社による「仕向地制限条項」です。原則として転売(再販売)を認めていません。国内仕向地変更でも制約されるケースがあります。転売を認める場合は、「利益分配条件」が付けられます。利益の一部を供給会社にキックバックするものです。
公取委の見解(要旨)は、「供給者が、仕向地制限によって需要者が行うLNG再販売を制限することにより、需要者がアジア市場やスポット契約市場に参入する機会を排除し、市場で取引する機会を減少させる状態が生じる場合には、原則として、独占禁止法上問題(拘束条件付取引)となる。」(下線部筆者)と明言しています。
つまり、公取委は供給サイドに独禁法上問題であると指摘した上で、LNG市場取引の活性化を逓減していることになります。
この話を石油業界に置き換えてみて下さい。私は公取委は二重人格者ではないかと思ってしまいます。
実効性のない競争促進の付帯条件だけでシェア50%の独占企業を認可しました。そして市場取引活性化どころか、活性化のバロメーターの海上取引き不活発で事実上の鎖国状態です。元売という供給者は商社という需要家に対して、業転の「届け先証明」という仕向地制限条項を付けています。
LNGの公取委見解を援用すれば、届け先証明は独禁法上(高速条件付取引)となるのではありませんか?
COC・中央石油販売事業協同組合事務局