『日産自動車は29日、国内に6つある全完成車工場で出荷前の新車に実施される最終検査を国の規定に違反する無資格の検査員が実施していたとして、同社や販売店などが保有する約6万台の在庫について販売を停止すると発表した。国土交通省は同日、日産に業務体制の改善などを指示した。自動車の運行には、保安基準の検査を受けなければならないが、一般に販売される型式指定車はメーカーが「完成検査」を実施する。国交省の通達では、検査員は「知識や技能を有する者」をメーカーが指名するとしているが、日産は通達に基づいて指名していない「補助検査員」が完成検査を行っていた』─9月30日付「産経新聞」
その後の調査で、回収・無償修理(リコール)を行なう対象車は24車種121万台にのぼり、今月2日から発売された電気自動車の新型「リーフ」も含まれている。リコールにかかる費用は250億円とのことで、ブランドイメージや業績への悪影響は避けられないと見られている。
日産・仏ルノー連合の会長を兼務するカルロス・ゴーン氏は、三菱自動車を含めたグループの22年の世界販売台数を1400万台に引き上げる中期経営計画を打ち出したばかりだが、グループの経営に奔走するあまり多忙を極め、日本滞在は月の3分の1程度とされており、今回の不祥事は、目配りが行き届かなかったゆえとの指摘もあるが、それは幾らなんでも言い過ぎのような気がする。それじゃあ、日産の社長や役員たちは何なんだということになる。料理屋じゃあるまいし、親父さんが弟子に任せて店を留守にしたとたん味が落ちたなんてことはない。
しかし、永年に渡り積み上げてきた企業ブランドが、拡大路線によるひずみによって、一夜にして崩壊するという例は枚挙に暇がない。人の命を乗せる自動車の生産現場で、安全管理を軽視する行為が常態化していたとすれば、日産とてどうなることやら。とりわけ、日産のEV戦略を担う新型「リーフ」が、発売即リコールというのは、矢沢エーちゃん風に言わせれば「マズイねぇ、ニッサン」という感じ。高い品質管理を誇る日本の自動車だから、ちゃんとした資格を持っていなくても適当にチェックすれば良しとする慣行がまかり通っていたとすれば深刻だ。「ヤバイねぇ、ニッサン」─。
セルフスタンドには危険物取扱者を常駐させなければならないが、人材不足で無資格者に店番させていると、消防署の抜き打ち検査で指摘され、行政指導を食らうことになる。改善が見られない場合は、営業停止を命じられることもある。「有資格者優遇」、「資格取得支援制度あり」などと謳って求人しても、ほとんど集まらないという状況。ならば、薬剤師並みの高給を支払うことが出きるかといえば、とても無理。儲かる仕組みを持たない業界は、これからも優れた人材を集められないまま、コンプライアンスを維持してゆかなければならない。
しかし、言うまでもなく、本当に怖いのは消防署ではなく事故そのもの。そろそろ朝夕に冷え込む季節となり、店頭でも灯油が売れ出す。毎年、タンクローリーからの荷降しで灯油タンクにガソリンを注入してしまう事故が起こる。そのまま気づかず誤販売すると、死傷者を出す恐れもある。資格があっても“慣れ”という魔物にとりつかれれば大惨事を引き起こすことさえあるのだ。
食べ物から乗り物にいたるまで、ありとあらゆる製品に安全性が求められている。そして、それらを販売する人々にも安全に人々に届ける責任がある。しかも我々が扱っている商品は「危険物」だということをスタッフ全員が肝に銘じなければならない。とりわけ、経営者は現場に出向き、目を光らせていることが肝要だ。恐らく、カルロス・ゴーンよりも忙しいGS経営者などいないだろうから。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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