『JXTGエネルギーは15日、セルフサービスの給油所の新ブランドとして「EneJet(エネジェット)」を10月から展開すると発表した。東燃系のセルフの給油所「Express」のブランドは、広さや設備の要件を満たせば、エネジェットに切り替える』─1月15日付「毎日新聞」。
JXTGのホームページのニュースリリースによると、『「エネルギー」と、素早さ・勢いの良さを表す「ジェット」という二つの言葉を組み合わせた造語であり、エネルギーを素早くチャージする、という思いを込めています。また、「Smart&Convenient」をコンセプトとして、「先進的で、早くて、きれい」かつ「使いやすく、便利」なセルフSSを目指します』とのことである。
なかなかカッコいい名前だが、単なる看板の架け替えにとどまるのか、「先進的な」セルフGSに生まれ変わるのかはまだよくわからない。とにかく、JXTGがスポンサーに名を連ねる東京オリ・パラが始まるまでに、「エッソ」「モービル」「ゼネラル」のマークをすべて同一ブランドに切り替えねばならないので、今年の10月から外観改装工事が始まり、19年6月には完了させる予定とのことだ。全国の主要幹線道路は、「エネオス」だらけになってしまうかも。だったらいっそ価格看板の数字も統一すればよくなくない?
一方、「エクスプレス」ブランドのセルフGSで展開してきた非接触決済ツール「スピードパス」も、「エネジェット」ブランドの下で、「エネキー」として存続することになっている。こちらはブランド統一後の19年7月から、全国3千9百ヶ所のセルフGSで利用できる予定。ところで「ナナコ」と「Tカード」は両方とも使えるの? 消費者の多くにとってはそっちの方が気がかりじゃないだろうか。
外観工事といい、POSシステムの導入といい、相当な投資が必要となるので、特約店もある程度負担せざるを得ないだろう。直接ではなくても、仕入れ価格に盛り込まれているかも。事実、合併後全然調整してくれなくなったというGS経営者の声も聞く。でもそれは仕方ないこと。私のようなノンブランドGSから見れば、ブランド料は当然払うべきだと思うし、「エネオス」ブランドの威光はいやますばかりであろう。ありがたや…。
JXTGがマーク統一を急ぐのは、単に東京オリパラが迫っているからだけではないと思う。そもそも、大合併の話は出光・シェルの方が先であった。これに危機感を抱いたJXが、東燃との合併を急いだという説が専らだが、いずれにしてもあとから始まった合併話が先に成就してしまった。こうなれば、ライバルたちの足並みが揃わないうちに数の力をまざまざと見せ付けて叩いておこうというのは、戦術としてはごく当たり前といえる。
いま愛知県では、「ファミリーマート」の傘下に入った「サークルK」の外観改装及びリニューアルオープンが急ピッチで進んでいる。こちらは、最大手「セブンイレブン」に肉薄すべく、消費者の認知度を高めようという意図があるのだろう。このように、本来なら業界の二番手、三番手が手を組んで先に仕掛けるべきところだが、出光がお家騒動でもたついているあいだにJXTGにイニシアチブを握られてしまった。出光・シェル連合がここから巻き返すのは結構大変だと思う。
方や、15日に東京都内で開催された合併後初のJXTG賀詞交歓会には1、300人もの特約店や協力会社が集まったとのことだが、盛大な宴の余韻にいつまでも酔いしれているわけにはゆくまい。図体がでかくなった分だけ、製油所やGSの統廃合を着実に実施してゆかないと“成人病”に冒されてしまうことは分かりきっている。要は来年の賀詞交歓会までに出席者数をどこまで減らせるか。「エネジェット」が「素早く、勢いよく」離陸できるかどうかはそこにかかっている。
セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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