以前から気になるというか、気に障ることがあります。SSのブランドです。この世には元売ブランドしか存在しないようです。
役所も業界団体も「元売ブランド+PB」という括りで語ります。中には「PBと無印」といったおバカ表現まであります。もっとおバカな一般マスコミが後追いします。小売に興味がないのでしょう。元売ブランドは固有名詞で表されますが、非系列は十把ひとからげでPBという「記号」しかありません。業界識者の“常識”なのでしょう。
手元に欧米の資料があります。米国NACS(全米コンビニ協会=SS団体)では、石油会社をメジャー5社を含むトップ15社が「全米で50%、残る50%が非系列で販売される」として、流通チャネルをコンビニとハイパーに大別しています。コンビニではWAWA、セブン-イレブン、クイックトリップ、ハイパーではコストコ、ウォルマート、クローガー等々の個別ブランド名が明記されています。
米国市場は巨大で石油会社も数多く、流通戦略も多様性があります。日本とは違うという声もあるでしょう。
それでは英国です。SS数は約8500。日本の4分の1。石油総需要も日本の40%、精製能力は需要を下回っています。日本の高度化法を先取りした状態です。日本よりはるかに小さな英国市場ですが、PRA(石油小売協会)の資料では、ブランドが22も明記されています。シェルやBPの国際メジャーからSS数36カ所のRixというブランドまで網羅してます。もちろん、Tesco、Sainsburyなどハイパー業態もブランドとして業界団体が認知しているのです。
つまり、大きな米国市場でも小さな英国市場でも、いずれも精製縮小と高度化法と同じ環境下にあって、ガソリンを売るブランドは石油会社だけではないのです。流通市場で認知されるものはブランドという考え方なのでしょう。また、そう捉えないと「市場実態」は掌握できないでしょう。
日本は「元売以外はブランドに非ず」の感があります。「精販協同!」と大政翼賛会の如き大声すら聞こえています。しかし、“ふつうの常識”として流通市場では消費者に認知されるものがブランドです。JAはともかくとして、私が独自に数えたところ商社独自ブランドSS数は、「伊藤忠エネクス390」、「丸紅エネルギー240」、「三菱商事エネルギー210」といったところです。この数字は、キグナス、太陽と同等か上回ります。
北海道には40年以上前から組織的にPB化してきたホクレンがあります。JAとは一線を画した独自戦略です。道内に270カ所あります。これは出光と同格、昭和シェルやコスモを遥かに凌駕します。さまざまな事業を展開していますから、北海道では元売よりホクレンのブランド認知度が圧倒的に高い筈です。
役所も業界団体も市場実態を無視して、「ガソリン製造者」をブランドと考えているようです。これはマクドナルドを山崎製パン、セブンイレブンを日清食品の系列店と呼ぶようなものです。流通市場ではマック、セブンがブランドなのです。
たとえ1カ所でも地域消費者が認知すれば、それがブランドではないでしょうか。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局