vol.698『次世代…』

先月22日、資源エネルギー庁による『次世代燃料供給インフラ研究会』なる会合が開催された。大学教授や石油業界関係者、コンサルタントなど20名ほどが集まって何を話し合ったかといえば、「EV・シェアリング・自動運転の普及などのモビリティの革新を見据えた次世代燃料供給インフラの在り方」について。会議で配布された資料や、議事要旨などはすべて経産省のホームページで公開されている。その中身を拾い読みしてみると─。

『一般の多くの自家用車の稼働率は約5㌫程度で、95㌫は稼働していない。移動範囲もほぼ10㌔圏内であることが多いため、現時点ではこうした車はEVと親和性がある。他方で、シェアリングが普及し、ロボタクシーのようなものが走り回るような状況になると、稼動率は非常に高くなる。この場合、充電時間なども考えると、瞬時に燃料補給できて、エネルギー密度が高い液体燃料の方が向いている。したがって、モビリティの進化とEV化には大きな矛盾がある点をしっかり認識する必要がある』。

現状では、EVには充電時間という克服しなければならない壁がある。一方、液体燃料の強みは、瞬時に補給できるのみならず、雪原や砂漠の真ん中でガス欠しても配達できること。会議では欧米におけるオンデマンド・モバイル給油ビジネス(つまりガソリンの配達)が自動車メーカーや石油メジャーからの出資を得て展開されていることも紹介されたようだ。

また、中国の電子商取引大手「アリババ」が、2018年にGSを完全無人化するという「スマートガソリンスタンド」構想を発表したことも取り上げられた。まず、給油所入り口で、センサーが車のナンバープレートに紐づけられたアリペイIDを自動認識。運転手は指定された給油レーンに自分で車を停車。すると、赤外線センサー搭載のロボットアームが、給油口を自動的に開け、給油。給油後はちゃんと蓋も閉めてくれる。決済はアリペイ口座から自動的に決済されるという仕組み。日本の給油所が諸外国と比べてIT化においても、省力化においても遅れている原因は何か─。

『保安規制と人手不足は密接に関わっている。例えば、法令に基づくセルフSSの給油許可の仕事についても、本来機械でできる仕事をする人間を募集しており、ショベルカーがある時代にスコップで掘る人間を探しているようなもの。今は人が行うよりも機械が行うほうが正確で安全。いろいろ将来の夢のある話を伺っても、現実問題としてそこが改善されない限りは次のステップに進めないのではないか』。

だれが言ったか知らないが、よくぞ申してくださった。そうなのだ。まずはそこから始めない限り、斬新な発想も、高度な技術も使いようがないのだ。この会合には、消防庁幹部もオブザーバーとして出席していようだが、相変わらず“様々な意見を勘案しつつ研究・検討を重ねてゆきたい”みたいな答弁をしていたのだろうか。

このほかにも、『携帯電話と同様に自動車はただで販売し、燃料によって後で儲けていくといったビジネスモデルもあり得る』とか『病院などの駐車時間が長いところで自動車を止めておけば、メンテナンス、給油しておいてくれる、自動的に燃料供給やメンテナンスを済ませるという新しいサービスもありえる』など、いろいろとおもしろい意見が出ていた。まあ、言うだけならナンボでも言えるんだが。最後に超現実的な意見を。

『本日、色々と提案いただいたが、SSの約7割が中小零細事業者であるという点を踏まえる必要がある。様々な経営革新を行っていく上で、そこまで費用負担ができるのかという小規模事業者の視点も重要』─。これまたごもっとも。だからこそ、個々のGSは、安売りなんかやってないで、新たなサービスやシステムの開発のためにいま力を蓄えておかなければならないのだが…。

セルフスタンドコーディネーター 和田信治
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