2月末からCOC有志数人が渡米して、テキサスで小売りの最新業態を訪問しました。私は同行出来なかったのですが、彼らの帰朝第一声は「凄い新陳代謝」でした。何年か前までは、EXXONやCHEVRONNなど石油系CVSがブランド力を維持していました。しかし今回は「ガソリンスタンド系」が存在感を失い、何種類もの業態複合やCVSに対するカテゴリーキラー(既存破壊業態)がガソリンでも支配権を握っていたそうです。
ところで、セブン―イレブンが米国事業会社(セブンインク)の経営状況を明らかにしています。スノコ社から1000店舗の巨額買収を行ったので、投資家に対する情報開示が目的です。
2017年の営業利益見込みが8..1億㌦、日本円で900億円強です。全グループ連結利益で米社比率が19%超となり、10年で倍増しています。米社はグループ内の“成長エンジン”ということです。
四半世紀前に本家本元の米サウスランド社が経営破綻し、弟子筋の日本セブンが事業を買収しました。日米のサービス水準の違いと投資家対応に苦慮しながら、2005年に多額の資金を投じて公開買い付けで米セブンを非上場、完全子会社化します。買収に続く大変な投資ですが、これ以降、米国セブンの業績が改善します。
私が渡米した2008年当時は、ちょうど端境期にあったのでしょう。中西部の店は暗く、汚く、段ボールが転がり、店員同士のおしゃべりでレジ渋滞。一方、西海岸サンディエゴの直営店は商品内容を除けば日本と全く同じでした。クレンリネスと商品管理が徹底されレジも日本並みに機敏でした。非上場化で投資家を気にせず、日本流を米国小売市場に持ち込んだのです。
そして米社業績好調の要因として、ファーストフード“品ぞろえ強化”PB商品の拡充などの商品戦略、スマホなどのデジタル対応戦略、新店開発と既存店活性化、店舗の生産性向上…等々に加えて「ガソリン」が置かれています。
◆
米セブンのガソリン販売店舗数は全体の3分の1、3300カ所です。旧TG、出光、シェル、コスモと同レベルです。
そして2016年のガソリン販売量は49.1億です。㌔㍑換算すると1860万㌔㍑。日本なら「シェア37%」というとんでもない数字です。しかも1店月間平均460㌔㍑です。全米平均300㌔㍑の1.5倍です。
M&Aでは五年前にエクソンモービルから買収した131店舗について、
①取得時日販3250㌦が4900㌦
②同粗利益率28.2%が35%
③同ガソリン日販5379ガロンが六三四〇ガロン
と大幅に業績改善されています。ガソリンを月㌔㍑換算すると、610㌔㍑から720㌔㍑への増販です。小売業者のセブンの方が儲ける力はもちろん、ガソリンの売り方も石油メジャーのEMよりうまいことが証明されてしまいました。
同社は米国市場についてこう述べます。
「石油メジャーによる小売事業の撤退ガソリン小売価格の競争環境緩和。日本と異なり、細分化された市場環境(上位10社で17%のシェア)。したがって成長余力が大きい」
つまり、メジャー直営撤退で石油会社の価格統制力が弱まり、また、多様なCVSブランドが存在することで市場の成長性が高いと述べているのです。日本のCVS市場はほぼ3ブランドに集約されています。セブンは、ブランド多様性なき国内市場を成熟とみて海外のグリップを強めるでしょう。
2018年はスノコ社の1000店が加わりますが、ガソリンはセブンの1.5倍です。年間800万㌔㍑アドオンされますから、JXTGを追い抜くかもしれません。
日本でCVSは「多角化の一つ」程度の理解ですが、実は油屋よりもガソリンを売るのがうまいのです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局