資源エネルギー庁が「次世代燃料供給インフラ研究会」(以下、研究会)が開催しています。内需減少の中で次世代のSSのあり方を検討していますが、中心テーマは明らかに「消防規制緩和」にあります。
先日報じられましたが、地方のSS過疎地で緊急時以外でもガソリンをローリーから直接給油する実験が行われます。米国西海岸ですでにニッチビジネスとして複数の事業者が行っています。こっちは土地高騰でSSが無くなった市街地での展開です。
セルフ監視の無人化も注目されます。IoTで複数のSSを一括遠隔監視する考え方も出ています。欧州ではシェルなどが価格設定までAI技術で自動化するSSを実験中です。
消防規制は固定費と運営費で投資コストを高めるだけでなく、運営の自由度を制約してきました。これが緩和されると、ビジネスモデルに大きな転換が行われるはずです。
一方、消防は「防災」の大義名分を持つので今後相当揉みあうことになるでしょう。
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研究会の第4回会合で、SC業態のイオン、コンビニ業態のローソンが意見を述べて、消防規制緩和を求めています。いずれも規制コストの低減とマーケティングの自由度を主張しています。
イオンは、セルフ解禁でいち早くガソリン販売に踏み切り、SS併設店は60店あります。同社は「特区を設定」を条件に
①キャノピーに難燃性素材のテント採用
②キャノピー面積の3分の1規制の緩和
③防火塀や通路の規制緩和
④監視を遠隔集中監視に
⑤単独荷卸しの許可
⑥ガソリン携行缶注油許可
―等を求めています。
資料を読むと、SCに公共機関、病院なども呼び込んで地域のインフラ拠点化する考えがあるようです。また、簡易スタンドを郵便局や公民館などに設置して、遠隔集中監視する提案も行っています。
一方、ローソンです。
不採算SSにコンビニを設置と、不採算コンビニにSSを設置して収益改善した実際例を紹介して、欧米と同じくSSとコンビニは相性が悪くないという考えです。
反面、コンビニと制服を識別した監視者の常駐義務、コンソールをSS側窓に密着させ計量機から30㍍以内に置くなどの規制がコスト高とともに、いかに店舗の全体設計を制約しているかを指摘します。
コンビニは厳格なFC契約ゆえに、収益が悪い場合、速攻で加盟店トラブルに発展します。FC契約に事後調整など存在しませんから、中途半端な店で妥協できないのです。そして要望します(概略)。
①給油監視はIT等技術進歩も踏まえて必要性見直し(顧客フレンドリーと経済合理性の視点)
②地域消防の見解統一(同)
③都市計画法と消防法の見解統一
④外向きサービスの緩和
⑤物品販売の場所制限の緩和
そして「現在の規制の下では、SSを「幅広い生活サービス拠点」とすることは困難」と明言しています。
資料を眺めていて暗然とした気分になりました。SS業界は“儲からない”と連呼し続けてきました。1カ所店が7割を占めるとか高い投資コストに苦しんでいるとも。
しかし、イオンやローソンのようにもうからない要因である消防規制に対して、明快な異議申し立てを聞いた覚えがありません。
もっと早い段階で絶好のチャンスがありました。80年代の「取扱商品自由化」です。コンビニ併設SSが多数生まれましたが、ほとんどが消えました。この時、防火塀やセルフなど店作りの自由度を唱えておれば…と結果論で言っても仕方ないのですね。
今回の規制緩和の暁には、明快に顧客フレンドリーを掲げお上に異議申し立てする流通系が、お上に従順な既成勢力に対して優位性を持つことでしょう。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局