資源エネルギー庁の「次世代燃料供給インフラ研究会」が報告書をまとめました。
この研究会は、直近の課題として
①SS過疎化
②人手不足
③生産性向上
等への対応が問題提起されています。中長期的には
①様々な機能と複合化した供給拠点の維持
②電気など次世代燃料
③自動運転などモビリティの変化
が述べられてます。
報告書で目に付いたのが「IoT活用」と「複合化」です。2つの言葉は表裏一体です。「IoT活用による省力化で人材に係るコストを低減していくとともに、貴重な人材をより有効に活用し、サービスの高付加価値化を図り、生産性向上につなげていく」とあります。
IoTの事例として、ガソリン販売で米国西海岸で行われているYOSHIという会社の「ガソリンデリバリー」が紹介されています。
スマホのアプリで会員となり、注文するとGPSで場所を確認して給油車が来ます。ガソリン価格は市況並みで7㌦の配達料を利益とするモデルです。月20㌦の会員になると、何度呼んでも配達料は会費で収まります。
会費ビジネスでコストコやカーシェアリングに似ています。出張メンテナンスも行うそうです。これをSS過疎地で出来ないかという研究会の提案です。
複合化については、「コンビニ、スーパーマーケット、郵便局、宅配事務所、病院・診療所等の地域を支える財・サービスの供給拠点において…「機能融合」が進展する可能性がある」と、給油と複合する可能性のある拠点が明記されています。
私のような単純化するのが好きな人間に言わせれば、“もはや石油販売業の時代ではない”という共通認識がベースにあると思われます。実際、COCでも業態転換が当たり前のように語られますので、基本的には研究会と考え方は同じです。
ただし、ビジネスを発展させるには消防法の壁が存在します。研究会は、セルフ無人化も視野に入れています。流通業界がしてきた、消防法行政の自治体見解の温度差、複数法令との抵触などがクリアされないと、報告は絵に描いた餅になります。一方、無人化にせよデリバリーせよIoT活用にしても、地場の中小企業がどこまで対応できるのかが重要です。それと自己開発による収益事業を開発できるかです。
仮にコンビニと機能を複合化した瞬間に、店舗運営の主体はSS経営者でなくなります。無人化したSSに必要なのはコンビニFC運営者です。皮肉なことに、上手くいけばSSで働くよりも高い収入が得られるでしょう。ただし、経営者でなく店長としてですが。
役所が何かを出せば世の中が(必ずしも役所の思い通りではなく)動き出します。予算で補助金というインセンティブも出るでしょうから。
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思い出すのは23年前の「石油流通効率化ビジョン研究会」です。自由化を前に経営で四つの方向性を出しました。
①サービス充実型
②ガソリン量販型
③多角経営型
④早期撤退型
このうち②と④は過激なほど実現しました。役所の研究会が「早期撤退」を明記したために、当時は石商を中心に大反発が起こりました。
しかし、自由化と価格体系の激変という火種に金融危機の貸し剥がしのガソリンが注がれたために、凄まじい勢いでSSとう汰が発生しました。セルフ化は1000㌔㍑を平気で売るSSを輩出しました。
一方、「サービス充実」と「多角経営」では、繁盛店がごく一部に限定されています。
この23年間は、事後調整や業転価格差の騒動とか、業界の大勢がガソリンしか考えて来なかったことを裏付けます。
「給油所」や「ガソリンスタンド」は死語になる。それが次世代研究会の根底にあると感じます。ガソリンで意地悪されなくなるとすれば、独立系に好機と思うようにしています。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局