元売再編で製油所直送圏拡大にともない、二次基地の油槽所利用が縮小して何社かが基地を撤退しています。物流効率化は企業再編で一番手っ取り早く統合効果が出る分野です。製油所から油槽所への転送費用の削減は大きいものがあります。
それにともない油槽所での売買が縮小することで、商社主導の海上高・陸上安が逆転して陸上高に誘導して系列・非系列価格差の縮小となっています。誰もが分かっていることです。
一方、これを以て独立系、PBが排除されるという声がありますが、違う見方をしています。高度化法が作り上げた状態は日本固有ではなく、グローバルスタンダードを周回遅れで再現したものだからです。
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1986年に欧州を訪れた時、英国では精製の縮小と油槽所合理化が始まっていました。スウェーデンではエッソがネットワークをクウェートのQ8社に売却していました。この時点ですでに「高度化法」が始まっていました。
米国でも80年代にメジャー同士のエリアスワップが行われています。不採算地域からの撤退と重点地域の強化、いわゆる選択と集中が始まります。同時に「精製高度化」が促進されます。1984年に247カ所あった製油所が整理統合されて、2000年には158カ所、2009年には148カ所まで削減されます。
とりわけ原油安と国際通貨危機に見舞われた90年代後半にメジャー再現と並行して製油所閉鎖が拡大します。
ただし、直近では2000年よりも処理能力が拡大し、1製油所当たりの能力は84年比で倍以上、本当の高度化設備を装備して稼働率は88%に達します。シェールオイルで原価が低下して利益率が上がった上に輸出も活発化していることが背景にあります。
日本より30年以上前に始まった高度化の結果、流通市場はどうなったのか。メジャーなどが流通から撤退して、ハイパーや流通系が主役になりました。米国ではセブンイレブンがトップブランドです。コストコから地域型コンビニまでブランドがあまた存在します。日本市場より小さな英国でも業界団体が「ブランド」として認識する数が30近くあります。
精製のプレーヤーも従来の石油会社でなく、高い分解能力を持つ石化系専門企業に置き換わりました。彼らは精製に徹して、精販分離が進行しました。そして流通がフリーハンドになって、新しいプレーヤーに置き換わったのです。
日本も環境は同じと思います。再編元売が絶対儲かる原油スプレッド固定型の価格体系を導入したことにより、儲からない流通市場への関与を回避する方向に動いていると感じます。出荷時点の利益確保の優先順位が高まり、販促費や事後調整に利益を費消しないインセンティブが働いているはずです。また、次世代事業への投資や人事異動も流通へのグリップを弱めると思われます。
高度化法は明らかに欧米の後追いであり、同じ未来すなわち系列・非系列問わず元売依存しない人たちに扉を開くと見ております。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局