COCと独立経営<636>HCとガソリン – 関 匤

石油流通市場で力を持つ大手HCが直営SSを売却するという話が、広く出回っています。大手元売がSSを買収して直営会社が運営するという話がまことしやかに語られています。

しかし、私の知る関係者に聞くとそうでもないようで「藪の中」みたいな話です。(この稿が出る頃に動きがあるかもしれませんが)

調べてみると、HCは出資ファンドから株式買戻しを行っているようです。昨年度に30%相当、570億円規模の大規模な自社株買いを実施しています。今年度の配当は1株48円とほぼ10割です。財務諸表を見る限り経営内容は決して悪い状態ではありません。勝手な推測ですが、経営の自由度を取り戻すために上場廃止も視野に入れているのかなと思います。

石油業界人は「SS競争に敗れた」といった見方をする人が少なくないのですが、HCにとってSSは1部門です。仮にSS売却となっても、HCにとっては事業ポートフォリオの組み替えと考えられます。

HCは1970年代に米国のモデルが導入されて郊外エリアで急成長しました。有名なコメリ、ケーヨー、コーナンはSS業界から参入して上場企業に成長しています。取引先が中小メーカーであったことから、大企業でなくとも品揃え、取引条件で優位性を発揮できたことで、短い時間で店舗拡大と上場を果たしました。

企業数に比して上場企業が極端に少ないSSやカーディーラーは、取引メーカーが大きすぎて系列店の枠組みの中に納まってしまいましたが。

HC業界は21世紀に入った時点で再編成が起こっています。HCは地方の中小企業が母体で始まり、地域性の高い業態特性を持っています。しかしこの頃から、大手HCの広域展開が始まります。バブル崩壊とデフレの中で大手が提携あるいは他社を買収するなど業界構造が変化します。

また、食品や医薬品まで網羅した超大型店舗が登場する一方で、小ぶりながら専門性の高い業態も生まれるなど、米国を原点としながらも日本の市場性に対応した業態革新の動きも顕著となります。

そして軌を同じくして一部HCが行っていた灯油販売が、HC業界の季節商品と位置付けられます。さらにSS規制緩和とセルフ化によりガソリンを扱う店舗も出現しました。

HC業界にとってさらなる変動はITです。ハードグッズの店ですからネット通販の渦中に入りました。自動車でさえネット販売される時代です。そこで専門性の高い業態が注目されているようです。冒頭のHCも「より付加価値の高い事業へシフト」をうたい、ペット、インテリア、ガーデニングを強化しています。これらはリアル店舗で実際に見てから買いたい領域です。

一方、投資家説明資料でガソリン売上げを除いたものを併記しています。キャッシュフローの大きさを評価しながらも、市況変動が大きいために経営依存できる商品ではないという認識でしょう。

なんだか半可通のHC論になってしまいましたが、ガソリンという存在が小売業にとって売上拡大をもたらす一方で、足枷になりうる諸刃の剣ではないかと考えてしまいます。HCがSSを売却云々を下世話に噂するよりも、SS業態とガソリンの関係に置き換えて業態のありようを考えたいと思います。

 COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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