前回、「ガソリンへの異常な愛情」と書きましたが、複数のCOC会員から「系列SSでガソリン集客目的の販促が目立つ」と反応がありました。そして異口同音に言ったのが「ティッシュの集客力は高い」です。
あるサイトによるとボックスティッシュの魅力は、中身を使い切るまで10日前後要することにあるそうです。その期間、心理的な販促効果が継続するそうです。
前にも書きましたが、ドラッグストア(DGS)では店頭にティッシュとトイレットペーパーを山積みにして安売りしています。誰でも必要とする消耗品だから、集客の磁力に位置付けています。
ただし、DGSの場合は来店の主目的がティッシュではなく、薬品、化粧品、健康食品など付加価値の高い商品群にあります。だから客数が増えるほど利益も上がるという業態特性を持ちます。
翻って、SSのガソリン集客は利益を継続的に生み出しているのでしょうか。ガソリンという消耗品をティッシュという消耗品をノベルティに使って増販することが、経営的にどうなのかと考えます。
私は販促を否定しません。むしろ好きなくらいです。自由化以前のSS販促合戦は外から見ている分には、非常に活気のある業界に映りました。そしてその当時の販促には、ある種の合理的な目的がありました。
それは、ガソリンが「利益商品」であり「成長商品」であったからです。今より安い市況でL20円の粗利は取れていました。
背景として、ガソリン高・他油種安がありました。元売はガソリンだけが利益商品であり、実態として自由化以前は「ガソリン元売」でした。
また、1980年代は23%、90年代は27%と市場も成長しています。利益商品が成長しているので、“満タンでティッシュ5箱”も合理的な意味はありました。
2000年から09年度でガソリン需要は▲1.5%。また上半期の比較ですが、2010年度18年度では▲15.6%も減少しています。明らかに需要縮小が加速しているのです。
そして収益回復しているとはいえ、自由化以降は「ガソリンマージン10円あれば御の字」です。利益商品でも成長商品でなくなった消耗品を増販するために販売促進する合理性はあるのでしょうか。
石油メーカーである元売にとっては合理的かもしれません。また、系列トップレベルでSS数100カ所前後の会社にとっては、取引交渉で有利になるかもしれません。しかし“ふつうの人”がガソリン販促にかまけているのが不思議です。
DGSと同じ考え方で、ガソリンで集客して車販ニーズを掘り起こすとか、車検予約を取る機会を増やすとか、利益戦略の仕組みがあるのでしょうか。
と書いていたら、COCの会員から「近所の系列SSが車検価格を大幅値下げしてきた」と連絡がありました。この業界、一事が万事と思います。つまり、どんな商品でもすべてガソリンの発想で「コモディティ化」してしまうようです。
だから車検も台数を稼ぐことが目的となり、元売や会社からも評価されるのでしょう。車検が石油業界によって消耗品にされています。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局