石油内販商社の方と話していたら、機動力で元売余剰玉を捌いたのも今は昔、これからは普通の特約店になる、とおっしゃいました。
商社各社は独自のマークを持っており「PBSS」として展開しています。私は複数元売から仕入れた製品価格を合成して、もっとも利益の上がる物流システムを組んでいると理解していました。実際にそういう使い方をしていた時代もあったと思うのですが、商社の方が曰くには、「元売マークアップの予備軍ないしは実態は系列、準系列店」ということです。ことほどさように元売と商社の関係が変化したということです。
自由化された当時は、総合商社本体もからんで原油、委託精製、物流、SSマーケティングまでサプライチェーンを独自に構想する会社もあったそうです。海外の商売では元売に勝てる、精製は専業会社に委託するなど自信を持っていたようですが、流通で元売の構築した物流網に太刀打ちできず、コスト高になったようです。
そこで商社の方が指摘したのが、「サンクコストに対する総合商社と元売の哲学の違い」でした。サンクコストとは、事業のためにすでに投資した資産(コスト)です。
総合商社は利益判断が素早くて、儲からないと見れば大胆に捨てるそうです。また、利に賢しいがために、同じグループ内であろうと高く売れなければ他社に売って利益を確保します。だから、原油担当者は内販会社より高ければ他元売に売るそうです。
片や元売は「石油会社」なので、サンクコストを潔く捨てれば廃業を意味します。また歴史的に、特約店の資本を投入してSS網を拡大した経緯があります。だから赤字を出してでも、事後調整で面倒を見ることになります。そこに「石油村の互恵関係」が維持されることになったと考えられます。
21世紀に入ってから、総合商社のサンクコスト判断に拍車が掛かっているそうです。某社の事業セグメントを調べてみたら、10年で一変していました。
10年前に恐らく肩で風切って歩いていたと思われるエネルギー部門が、大幅に縮小されています。そのせいか全社の売上高は半減です。しかし、純利益は倍以上に増えています。高い株価をつけています。
この間に激しいサンクコストの切り捨てが行われたことでしょう。先の商社の方は、「営業利益は赤、雑収入で大幅黒」と言います。つまり配当収入が大きいということです。現在の総合商社の実態は「投資会社」といえます。右から左に商品を流す会社ではなくなったようです。そして激しい事業セグメントの組み替えによって、企業体質を強靭化したといえます。
内販会社に対しても、従来の「流通業態」ではサンクコストとして切り捨てる投資会社の顔を見せているのかもしれません。内販会社としては、利回りの高い「準系列化」を選択したのかな、と想像します。私は、COCのPB経営者に「準系列化の実態」を啓蒙しています。
ところで年末の日経新聞に「石油元売失われた20年」という辛口の記事がありました。石油開発、鉄鋼、石油化学と比べて、元売の海外戦略が動いていないという内容でした。国内のサンクコストを抱え込む性格によるものかもしれません。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局