COCと独立経営<673> 「顧客は移動体」 – 関 匤

資源エネ庁の石油統計で7月のガソリンは前年比92.8%と大幅減少しています。4月は微増でしたが、5月以降5%以上の減少基調です。4―7月で見ると95・4%です。下方に拍車が掛かった感があります。

8月は酷暑のエアコン効果もあって前年越えのようですが、16、17、18年8月は連続減販しています。ガソリン高が社会問題化した06年、07年でも8月は560万㌔㍑の需要でしたが、18年は480万㌔㍑までベースダウンしています。

1SS当たり10㌔㍑近い減販であり、客数にして400台以上が未来店客になったという計算です。給油との連動性の高い洗車、オイルなど油外収益でも逸失利益が発生しているでしょう。

日経新聞によると、元売再編による業転出荷減少効果だけでなく、大都市部でカーシェアリング効果が表れているのではないかと書いています。

調べてみたら、最大手のパーク24で8月の会員数135万人です。同社だけでカーシェアリング総数の8割を占めます。会員数は2013年から月に1万人ペースで増え始め、最近は1万5千人が当り前で、19年4月以降は1万9千人と増加ペースが上がり続けています。会員数を保有台数で割ると、50人が1台の車を共同利用しています。

都市部では駐車料金、自動車維持費用が月に10万円に達します。しかし、自家用車は90%の時間を駐車場で過ごしています。一方、カーシェアですが、毎日2時間ずつ使って月に5万円で収まります。さらに深夜や6時間パックを組み合わせれば、3―4万円で利用できます。(タイムズカーシェアで料金シミュレーションしました)

やはり日経が伝えるように、会員数の拡大は都市生活者がボリュームゾーンを形成しているのでしょう。

さらに、トヨタが米国ライドシェアのウーバーに1千億円強を投資しています。自動運転技術開発を協業するそうですが、ウーバーの“本業”ライドシェアが日本で動き出す可能性を感じます。ライドシェアはいわゆる白タクで、一台に複数のお客を乗せるわけです。国交省とタクシー業界は絶対反対でしょうが、トヨタが動けば国が動きます。実車を見たこともない燃料電池車にトータルで何兆円も予算が投入されるのですから。

それとライドシェアは、「働き方改革」にも馴染みます。SSスタッフがフレキシブルで数時間働いて、会社の車を借りて白タク業を自営することが現実になるかもしれません。

ガソリン需要の成熟化は、少子高齢化とエコカーの増加よりも「車の使い方の流動化」がボディーブローで効いているのではないでしょうか。成長期と今とでは、車に対する概念が明らかに変わっています。

「ケンとメリー」や「スカイライン3兄弟」の時代と、現在の「プリウスと軽自動車」の時代では、自動車の価値観が180度異なっています。車の格好良さとか個性の発揚ではなく、「移動手段」への価値観の変化です。

シェアもライドシェアも都市ニーズの現時点ですが、地方都市にも波及するでしょう。消費者ニーズに変わりはないので。

SSは、中期的な顧客イメージを「給油客」から「移動者」に転換する必要があると思います。移動者にはサウジでテロ攻撃したドローンまで拡大解釈する必要があるでしょう。

三井住友銀行のレポートにこうあります。

「シェアリングは車離れを招くものの、

車両稼働率の上昇、

非保有層の運転機会拡大等から、販売・保有台数はさほど変わらない可能性。

自動車関連企業にとっては、営業体制の見直し、サービスラインナップ拡充、異業種とのアライアンス等、自動車シェアリング普及への対応が求められる。」

外車に興味のかけらもない「走れば良し」の自身の感覚からも、「移動体サービス」の観点から、様々なビジネスモデルが登場すると考えています。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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