COCと独立経営<676>「最後の砦」ってナニ? – 関 匤

最大規模の台風19号が東海、関東、信越、東北を切り裂きました。数えきれない河川の氾濫で各地の平野部に広大な湖が出現してしまいました。1都14県で840カ所(9%)が営業停止です(14日現在)。

台風一過の日曜日、近所を流れる一級河川は広大な野球場、サッカー場が水没して土手下3㍍まで泥のような濁流がとぐろを巻いていました。3年前に湾曲部の土手に緩い角度のスロープを付ける補強工事が完了しており、水圧を分散させました。

大規模水害が年中行事になっています。“コンクリートから人へ”という言葉は美しいですが、“人を守るコンクリート”という視点を再認識すべきではないかと考えます。

COCの某会員は複数SSを展開します。

台風が近づく12日土曜日、スーパーやコンビニが閉店や営業時間を縮小する中で、全店に通常営業を指示しました。従業員を危険にさらすという批判も出そうですが、経営者の判断はこうでした。

「顧客が避難所に退避するとか浸水や停電により車中で夜を過ごす可能性がある。安心して移動できるようにガソリンを満タンにしておきたい。こういう時だからこそ我々に対する期待度が高まる。可能な限り営業しよう」

「最大多数の最大幸福」を決断したわけです。商圏内には休業するSSがたくさん出たために、豪雨の中でこの会社のSSはラッシュ状態だったそうです。

話はここからです。経営者は憤っています。「災害時対応SS」が休業していたからです。警察や消防車両も受け入れましたが、「緊急時SSの仕事じゃないのか」です。

この業界で声の大きな人たちは、「サプライチェーン」とか「石油は緊急時に最後の砦」と口にします。資源エネ庁も「ガソリンスタンドは災害時における『最後の砦』」と明記しています。

最後ではなく“最前線の砦”ならば、敵(災害)が強ければ後方の砦へ撤退もアリでしょう。しかし、「最後の砦」に後はありません。玉砕覚悟で死守する“死に場所”です。従業員の危険性より消費者対応を優先する覚悟が「最後の砦守備隊」なのです。非常に厳しい意味を持つ言葉であることを理解して言っているのでしょうか。

浸水や停電など物理的被害ならともかく、「最後の砦」を掲げながら敵前逃亡です。言葉を書き換えて、砦の後ろに“ナンチャッテ!”を付けた方が現実的です。

また、別のCOC会員はPBで「住民拠点SS」です。台風の翌日、近隣にある2つの系列有力店SSが休業状態だそうです。玉切れです。COC会員は商社からきちんと供給を確認したので、これまた給油客でラッシュになりました。

「サプライチェーン」なるスローガンが機能していません。浅学なりの理解ですが、サプライチェーンマネジメントって、製造から最終販売拠点までの流通工程からボトルネック(障害)を排除してリードタイムを効率化することではないでしょうか。

上記の場合、基地からSSの工程に遅延というボトルネックが生じているわけです。緊急時、緊急時と東京の会議室で大言壮語して予算を取りながら、本当に実効性があるのかはなはだ疑問です。

そもそも論として「最後の砦」は誰のためにあるのでしょうか。国民であることは言うまでもありません。電気、ガス配管、道路などインフラが機能しない緊急時にあって、SSは砦になりうるのでしょうか。

私が考える緊急時対策は「食のエネルギー供給」です。食べれば耐えられます。

機能しない「砦論」に莫大な予算を投入するよりも、補助金付けてでもイワタニの簡易コンロとボンベを全家庭にバラまいた方が緊急時に頼りになる、というのは暴論でしょうか。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206