COCと独立経営<697> 45年間「99%が中小企業」- 関 匤

資源エネ庁のホームページで「SSの現状」としてこうあります。

「SSを運営している石油販売業者のうち約98%は、中小企業です。それも、運営するSSが1カ所だけの企業が72.1%。2~3カ所を運営している企業を合わせると、91%を占めています。」

零細業者ばかりだからこそ、緊急時の最後の砦として予算措置を講じて拠点を守らなければならない。守るためにも需給を適正化したサプライチェーン構築を図るという政策の考え方です。

45年前にこんな発言があります。

「ガソリンスタンドというのは、99%近くが中小企業でございます。そうしますと、経営の安定化ということもやはり必要でございます」

衆院農林水産委員会(昭和50年6月5日)で資源エネ庁・山中正美精製流通課長の発言です。この当時の“ネタ”は消防許可だけでオープンする無印SSの増加でした。

テーマは変わっても変わらないのが中小企業の比率です。45年間、SS業界は零細であり続けたということです。

少々古いデータですが、経産省の商業統計平成19年度調査を見ると、百貨店・スーパーを除く小売業の店舗数はピーク時の昭和57年から3分の2になっています。業種でSSに似ているのが男子服小売業でピーク時44000店が22000店と半減しています。SSと同様に激しい淘汰が起こった業界です。

しかし、業界プレーヤーの動向は似て非なるものがあります。青山商事は1974年に業界初の郊外型店舗を出店、90年に300店で東証上場、2019年現在で950店舗です。AOKI、はるやま、コナカにユニクロも含めれば、SPA(製造小売り)という新しい経営戦略やスーツ、カジュアルに特化した専門店などプレーヤーの業態転換が行われています。業種として店舗数は激減したものの、「業態の置き換え」が進んでいます。その結果、創業年はSS企業よりはるかに若くても多くの上場企業が誕生しました。

この業界はSS同様に厳しい業界環境にありますがさらなる業態革新を試み市場の潜在ニーズを掘り起こそうとしています。

なぜ、SS業界で店舗数は減っても上場企業は生まれず、45年前から中小企業比率が変わらなかったのでしょうか。これは経営学でテーマにできるかもしれません。

私の持論ですが、業界の進化を歪にしたのは第1次石油危機時の「標準価格」にあると考えています。ガソリン独歩高の価格体系です。元売の組織が傾斜して「ガソリン会社」になりました。

そして、業転でガソリン利権を侵食する無印SSに対し全石連が「揮販法」を議員立法します。以降、屋上屋を掛ける行政指導とそこから様々な紛争もありましたが、新規参入の難しい業界構造となりました。従来型SS業態だけで完結する石油村の構造となり、系列間・系列非系列の争いも、村というバケツの中の嵐に完結しました。

標準価格でガソリン絡みの事後調整が定着し無印SSも業転の安さを享受しました。SS経営者の意識も大部分がガソリンに支配されるようになりました。自由化までSSの倒産はほとんど稀でしたから。

国会で資源エネ庁山中課長が発言した昭和50年、セブンイレブンもオートバックスも誕生したばかりでした。海の向こうではコストコが一号店の時代です。土地神話が全盛時代でSS企業は資本力を持っていました。その気になれば、草創期の小売業態を買収できたかもしれません。

45年経った今も、知恵と努力では動かせない市況商品に拘泥し続け、あげくに役所から零細扱いされていることが残念です。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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