国内のメディアでは東京都知事ばかりクローズアップされているように見えますが、コロナ対策で海外メディアから賞賛されたのが和歌山県庁です。
ワシントンポスト紙は、「ワカヤマという地方都市が政府厚労省の検査方針に反して、独自の厳格な検査体制で臨んだ結果、世界的パンデミックの渦中にあってローカルでコロナに勝利した。和歌山モデルと呼ばれる」(要旨)と書きました。
和歌山では2月中旬に病院で5人の感染が起こりました。仁坂知事がトップダウンで決断し、野尻医務技監に指示系統を一本化した上で、迅速に病院を封鎖します。当時の厚労省方針は「中国渡航者」としていたPCR検査に対して、現場の医師の判断で検査を実施しています。国の方針に逆らったわけです。
コロナ感染者は3月1日で全国206人、うち和歌山は11人で6番目に多い県でした。6月3日時現在で、全国で16779人に対して和歌山は63人。順位は31番目です。明らかに「和歌山モデル」がその後の拡大を押さえています。
緊急時のたびに政府が的確に機能したことが記憶にありません。おそらく国の制度が「平時」を前提に動いていること、そして制度の自己検証ができていないことにあるのでしょう。今回も厚労省は当初、PCR検査対象を中国渡航者に限定していました。先の大戦で日本軍部が犯した過ち「戦力の逐次投入」です。官僚の脳みそは変わっていません。
和歌山の仁坂知事は旧通産省官僚です。知事のブログに書かれていますが、入省時にオイルショックがあり、今回のマスク騒動と同じくトイレットペーパーや洗剤でパニックが起こります。当時の通産省は、メーカーに増産指示とアレンジをし、在庫をありったけ市中に放出する指導でモノ不足を短期間に終息したそうです。知事は「人心の安心を買ったあの行政が何故、私の古巣にないのかなあと、ちょっと寂しくなりました」と書いています。中央政府と行政機構が制度疲労しているのでしょう。
COCの会員でキャッシュレス事業者登録した方から聞いた登録時の苦労話を思い出しました。
経産省事務局は「レシートに還元額表示」を要求するのですが、SSPOSはソフト変更を要します。しかも元売マークを掲げているから勝手に変更できません。セルフSSで店頭価格表示しているから、精算後に全ての消費者が値引きを確認できると言っても理解してくれないそうです。
事業者登録はされていても補助金交付決定が出ないままに、昨年10月からSS店頭では値引き開始の前倒しです。執拗に交渉した結果、要求は通ります。ところが事務局はとんでもない条件を言い出します。
「消費者が見える場所に還元額を表示しなさい」です。給油数量、油種そして市況で還元額は変動します。その都度、表示しなさいです。“とんでもない”のはここからです。「0.01㍑ごとに80㍑までの還元額を表示してください」
市況商品を油種別に価格変動ごとに表示しなさいと言われたのです。1油種8千行!になります。データ作りを苦にしない私ですが、エクセルで8千行とは…絶句です。商売の現場に無関心だから、平気でこんな指示を出せるのでしょう。
和歌山モデルは、国の方針よりも現場に関わる医師の判断で惜しまずPCR検査を実施した緊急時対応で奏功しました。一方、刑事ドラマの名文句に喩えれば「会議室で事件を“起こしたい”」方々がまだまだ少なくないようです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局