元売のハイオク広告やウェブ記載が景表法の虚偽広告に該当するという毎日新聞の報道が出ました。元売間バーターで品質差異がないのに、ハイオクの独自性を告知したという趣旨です。
COCのPBSSは、複数元売のハイオクの「スペシャルブレンド」を販売しています。“全社の基材が入っているから最強のハイオクだ!”と会員の皆さんに喧伝していましたが、系列SSもスペシャルだったのですね。
毎日新聞の報道は、バーターハイオクの品質問題ではないので、元売が誤解を招いた広告記載を認めて頭を下げて話は終わりかなと思います。ただ、取材を受けてからHPの記載変更は情けない話ですが。
ただしバーターは業界の常識であって、消費者に理解されているのでしょうか。かつて30を超えていたハイオクレシオも今や9まで凋落していますが、ハイオクに関心を持つ消費者は少なくありません。実際、自動車関係でウェブ検索すると、自動車メディアのサイトが引っ掛かります。彼らは定期的に「ハイオク特集」を行って、どの元売のハイオクが良いかという特集を行っています。
業界の常識と消費者のそれが違うのは、一般のクルマ好きたちはハイオクを差別化商品と考えているからこそハイオク特集が組まれているからです。毎日新聞報道を機にこういうサイトが一斉に後追いしており、これからハイオク特集を目にすることがなくなるでしょう。
熱心な自動車メディアがあって、昨年5月に「ガソリンで出力は変わる?」という特集で、ENEOS、コスモ石油、昭和シェル、出光四社のハイオクガソリンをNSR250Rに入れパワー測定をしています。測定値のグラフがありますが、回転数によるごく微細な差異はあるものの4社ともグラフはほぼ同様のカーブを描いています。このメディアはバーターを知らないけれど、測定で品質差異がないことを実証していたことになります。
また2018年に、ハイオクを取材したライター小野正樹氏は「各社の性能向上の主張が入り乱れているが、オクタン価については『未公表』『程度』『以上』と曖昧さが溢れていて、せめて加速性能ぐらいは同一車種でなんとかテストできないかと考えてしまう」と雑誌ベストカーに書いています。これもバーター品ゆえにオクタン価を明記できない業界事情を裏付けています。
報道のポイントは元売間バーターですが、それが活発化したのは九六年の自由化以降です。ガソリン高中間品安の価格体系が逆転して、ハイオクも独自供給から相互融通に転じたと認識しています。
自由化当時は元売が13社ありました。しかもバブル崩壊と金融危機の最中でした。産業界が一斉に物流コスト合理化に動いた時であり、13社が内航船横持ちなどやるよりも元売間バーターは合理的でした。
しかし現在、大手元売は3社に再編されました。ENEOSはシェア50%、出光昭和シェルは30%と立派な寡占企業です。
供給を寡占化したがゆえに、陸上二次基地を陳腐化させて業転流通を抑制、制御できるようになりました。商社は元売の顔色を窺い、業転を系列SSに売り込むことは忖度して自粛しています。
であるだけに、毎日新聞の報道を業界常識で“単なるミスさ”と見逃すことはできないのです。供給を寡占したのであれば、元売間バーターは不要ではないのでしょうか? 現に業転流通を最終届け先まで掌握しているのですから。他社ハイオクを寸借するのではなく、「純正ハイオク」として正々堂々と独自品質をアピールする。それが寡占元売としての正道ではないでしょうか。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局