大手元売3社の第1四半期決算は、コロナ禍の相場と需給激変のあおりを受けて、3社とも大幅減益となっています。
白油マージンは一時ゼロに近づきましたが、第1四半期中にV字回復して1㍑20円辺りまで来ています。在庫評価損が大きいところに、石化マージンの低調が影響しています。
燃料油の販売量も出されていますが、
- ENEOS=ガソリン▲21・2%、灯油▲4・5%、軽油▲10・6%、内需合計▲16・5%
- 出光興産=ガソリン▲19・4%、灯油+13・5%、軽油▲10・5%、内需合計▲19・1%
- コスモエネルギーHDS=ガソリン+10・0%、灯油+28・6%、軽油+7・9%、内需合計▲3・6%
- 内需合計=ガソリン▲16・7%、灯油+9・6%、軽油▲9・1%、内需合計▲12・7%
となりました。ENEOSと出光の大幅減販に対して、コスモの増販が際立っています。内需平均を大幅に上回っています。大きいのは前年同期に旧東燃供給分だったキグナス石油販売量が、昨年7月以降入り込んだことによります。逆にENEOSからキグナス分が抜けたことになります。
ただし、コスモ石油は19年度決算時点でA重油を含む白油四品の20年度販売計画を前年比101%と見込んでいましたが、第1四半期実績は111・3%と大きく計画を超えています。キグナス供給増加だけでなく、最大手2社に販売で売り勝っています。
大きすぎて独禁法の制約を受けるENEOSと統合の内部事情にこれからブランド統合する出光に対して、従来組織のまま事業活動を思い通りに展開できる「シェア15%(ガソリン)」のポジションがコスモの追い風になっているようです。
もっとも、第1四半期の精製稼働率(定修除き)がENEOS前期比68%、出光70%に対してコスモは92%と非常に高くなっています。コスモは供給のショートポジションのため、キグナス供給開始から製品輸入で補完しており、第1四半期のガソリン輸入を前年比2・5倍に押し上げる原動力となっています。従って、COCのPB業者はコスモの供給余力に期待することはできません。
さて、コロナ禍の特殊要因とはいえ大幅な減販に直面して、一方でマージンは比較的安定した状況にあります。
SS事業者の場合は、戦略の方向性は多岐にわたります。車販や車検に本格的に取り組む会社はガソリン販売量にこだわらないか、逆に、事業利益が大きいゆえに見込み客を増やすべく増販するという戦略もあります。
一方、「石油メーカー」である元売の場合は、SS拠点の販売量、マージン、運営費用、物流費用のベストミックスを意識せざるを得ません。SS拠点の選別が強まるものと考えられます。
ポイントとなるのが、販社を含めた社有SSのあり方です。全元売の社有SSは73%がセルフ化されています。社有セルフは元売標準タイプであるがゆえに、そして人的要因が少ないがゆえに、拠点の評価を定量的に行うことができます。
これが厳密に進められると思われます。実際、今年に入って某元売が社有SS運営基準を厳格化しているという話を聞きます。そこで考えられるのが、元売の運営基準で利益を計上できる販売業者に社有を付け替えるという動きです。いわば「社有SSの貸しはがし」ですが、新規投資より有効であり目立った動きが出る、というのが私の見立てです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局