8月31日、日本の株式市場に明るいニュースが飛び込みました。
「オバマの賢人」や「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャーハサウェイが、日本の総合商社5社に6700億円相当を投資しました。投資先は三井、三菱、伊藤忠、丸紅、住商の五社で、それぞれ5%相当です。
バフェット氏について、断片的な知識しかありませんが、短期売買ではなく企業を精査して成長性・持続性を検討したうえで長期保有する方です。
コカ・コーラを保有する理由として、「ITは明日にでも画期的なOSが開発されるがコーラは20年後も飲まれている」からだそうです。日本人好みの投資家で、書店には数多くの書籍が並んでいます。
総合商社は海外で理解されにくい業態のようです。多角経営のコングリマリットでは説明できません。バブルの頃までは、専門商社の集合体で原料や製品のバルク流通で手数料を稼ぐイメージがありました。
しかし、バブル崩壊と商社再編を経て、ホールディング会社が事業カンパニーを統括しながら、原料や製品加工から小売りまで投資によって深く関与して、付加価値を目指す方向に転換してきた感があります。
5商社の組織図を見ると、10年単位で大きく変わっています。企業により相違はありますが、10年ほど前は資源・エネルギー投資に思いきり傾斜していました。しかし2014年に原油価格が暴落すると生活関連などにシフトチェンジしています。
商社の石油需給に関わった方によると、自由化の頃は原油調達、委託精製、流通まで一気通貫の戦略を進めたそうです。しかし元売再編が進むにつれて、事業の先行きを見通すや手じまいに入り、内販商社など関連資産を整理・売却して事業そのものを始末してしまいます。「サンクコスト」(埋没費用)という言葉が使われており、特損を計上しても素早く手仕舞いするという考え方です。
装置にしがみつくメーカーではないので事業の見極めが素早い、よく言えば変化対応力で生きている業態といえます。悪く言えばその昔、事業を食い散らかすので“ダボハゼのA(商社名)、Bの跡にはペンペン草も生えない”と揶揄されたこともあります。
報道によると、バフェット氏は商社の社歴の長さも評価しているそうです。五商社の源流は江戸時代です。ただ社歴が長いだけでなく、時に投資失敗で大やけどを負う経験もしながら経営を維持して、高い利回りを継続するのも、商社ならではの変化対応ゆえでしょう。
伊藤忠商事は2020年の企業コンセプトを創業者伊藤忠兵衛の精神「三方よし」としています。「売り手や買い手に加え、社会への貢献ができてこそ長く商いを続けることができる」という近江商人の経営哲学です。英語版でもSampo-yoshi (meaning good for the seller, good for the buyer, and good for society),” the management philosophy of the merchants of Ohmi.と明記されています。商社が永続してきた精神をバフェット氏に示しているように思えます。
コロナ禍にあって、今を投資チャンスと考えています。セブンイレブンのスピードウェイ買収もコロナの今だからということでしょう。「良い会社を安く買う」という投資の絶好機と見ているのでしょう。
ひるがえって、SS業界でも企業規模は小さくても今の環境を逆手にとって投資に踏み切る会社があります。SSを拡大することだけが投資ではありません。優秀な人手の採用も今は好機と言えます。ガソリンマージンの安定に安住している時ではないと思います。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局