9月11日付の油業報知新聞トップに全石連東京総会が報じられていました。見出しに「満タン運動さらに推進」とありました。
ここ数年、全国の石商で「満タン運動」が叫ばれるようになりました。大義名分としては、災害時対策として乗用車のタンクを満タンにしましょうという心がけがあります。COCの石商非組合員がこれに賛同して店頭に満タン推奨の告知をしています。
もう1つ、本音としてはガソリン減販対策があります。構造的な需要縮小にあって、満タン給油を増やして減販の歯止めにすることです。
実は過去に、同じ減販対策として「満タン運動」が行われたことがありました。1979年から1984年にかけて、ガソリン需要が低迷しました。第2次オイルショック時に、資源エネ庁が人為的に「日曜祝日休業指導」を行った「成果」です。年率6-7%増だったガソリン需要が前年並みにスローダウンしました。
この間、乗用車保有台数は年率4%近く増えていたので需要落ち込みを下支えはしています。しかし、個人消費者が急増していただけに、休日休業の影響は大きく、法人型でないSSは軒並み減販しました。
この時に、気の利いた経営者が始めたのが「満タン運動」でした。お題目を唱えるだけでなく、マーケティング戦略として実践しました。「満タン当てクイズ」です。
給油スタッフが”お客さん、何L入るでしょうか?”という数量当てクイズです。お客さんが的中したら”ガソリン無料!”とお客さんの心をくすぐりました。当時、業界紙で各地の満タンクイズが報道されたのでかなり効果があったのでしょう。
すると、満タン当ては確率が低いのでもっと受益者を増やした方がお客さんが喜ぶし増販効果も高いと考える人が出現します。始まったのが「ジャンケンポン・キャンペーン」でした。スタッフがお客さんとジャンケンをして、勝ったら値引きしますというものです。
これに着目した某外資系元売支店が組織的に展開しました。3回ジャンケンで、1回勝ったら1円、3回とも買ったら5円引きなど手練手管が花開きました。手の空いているスタッフが一斉に”ジャ~ンケン・ポ~ン!”と盛り上げてスタッフのモチベーションも高まり、大きな増販効果を得ました。
すると”やっちまえ”と商圏内に大量のチラシで告知して、店頭にミニスカートのキャンペーンガールを呼んで大々的に展開するSSが登場します。凄まじい集客効果を得たそうです。
ここに至って全石連(市況警察)が激怒して資源エネ庁に筵旗で陳情します。あえてジャンケンポン禁止令となります。某外資系元売支店は関係者全員異動で「ケジメ」をつけました。
是非はともかく、この時代の業界人は減販を販売努力で突破しようとしたことは間違いありません。ティッシュ5箱に象徴される景品販促は、バブル期に爆発的に広まりましたが、実は1984年頃の需要低迷期に先駆者が登場しています。「運動」を唱えるよりも、消費者がやりたくなるような仕掛けがあって実がともなう、と考える私は過激思想でしょうか。
もう1つ思い出しました。この時期に増販策として”ブーム”になったのが、「マーク替え」でした。これも資源エネ庁がタオルを投げ込むほど過熱しました。タオルのきっかけは、旧日本石油本社前にあった日石SSを出光興産がマーク替えしようとしたことです。もし実現していたら「出光興産日石本館前SS」になるはずでした。
昔話のようですが、化石燃料に逆風が吹く時代にあって、マーク替えという古式蒼然とした方法論が元売の”マイブーム”として再登場すると思います。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局