COCと独立経営<729>SS過疎地はEVで解消する? – 関 匤

日産自動車の情報サイトで、ある地名に既視感を覚えました。「静岡県浜松市天竜区」です。

同区のうち、春野地域、佐久間地域、水窪地域、龍山地域は、過疎対策自立促進法の指定地域を受けています。この地区で2018年にSS過疎地対策として、SS跡地を使ったローリーから直接給油する移動給油の実験が行われました。

既視感を覚えたのは、今年、同じ地区で同様の実験が行われていることでした。ただし、ガソリン給油ではなくEVです。

「タクシーのオンデマンド配車システムとしてMaasプラットフォームを提供する。EVは、佐久間町に設置した太陽光発電パネルで発電した電力などを利用して運行することで、過疎地域交通の利便性の向上と運用業務の合理化、再生可能エネルギーの地産地消に向けた検証・検討も行う。」

高齢者向けに音声自動応答や難聴者にはタブレット端末でタクシーを呼び、市街地との往復などに利用します。同じ地区で石油と電気で過疎地対応を比較検証しているわけです。

先に行われた移動給油実験後に浜松市主催で関係者の意見交換が行われています。(以下、要旨)

・ローリーの運営主体は油槽所か?地場のSSや住民組織等は計量機のみを保有・管理するのか?それとも全てを管理する団体を設立するのか?

・供給側と流通側との関係はどうなるか?

・使うときだけ計量機をタンクローリーに乗せて設置したり倉庫から出すのは、かなり負担が大きい。

・災害時対策用に据付け型にしておけば公的資金も入れやすくなるのではないか。

・計量機と一体型のタンクローリーを製造したほうが機能的なのではないか。

  •  実証実験時用に石油元売に燃料確保を依頼した。通常の燃料の調達は難しいので、地域ぐるみで考える必要がある。

-意見の一部ですが、人件費や設備など固定費、運営費のハードルが高そうです。はなから相当額の補助金を前提とした議論です。

一方、EVはITのプラットフォームというソフトが車と消費者をコネクトすれば成り立ちます。給電場所は移動給油より相当にコストが安く済みます。EVを購入して自宅に設置する手もあります。

移動給油で日時を指定されて消費者の動きが縛られるよりも、電線のインフラがあるEVの方がはるかに移動の自由度が高いと言えます。

しかも政府は来年度から、再生可能エネルギー電源使用の場合、最大80万円の補助金でEV購入を支援します。天竜区の場合、実験に再生電源会社が入っているので補助を受けられます。

国交省は自動車メーカー平均の燃費を20年比で2030年に44%も改善する目標を設けています。エンジン改良では到達できない水準です。国交省は、当然、非石油車両の増加を見込んでいます。コロナを機に、一気に電気への傾斜が強まってきました。

ガソリンのようなコモディティは、流通で規模の経済性が前提となります。装置という固定費をまかなうためにも不可欠です。だから経済性の低い過疎地からSSが消えています。それを補助金ありきで高い維持費を使っていたら、全国に330もある過疎地にどれだけの税金を投入することになるでしょうか。

局地的な対応としては、EVの方が合理性が高いと思います。ITのプラットフォームでEVを運行しながらCASE(コネクト・無人・シェアリング・電気)も視野に入れれば、過疎地対策に止まらず、いわゆるスマートシティが実現するかもしれません。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局

 


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206