COCと独立経営<740>車販とトップセールスの強さ – 関 匤

最近、油業報知新聞でもさかんに報じられていますが、車販に取り組むSSが増えています。

自動車に対する消費者の価値観が流動化しています。保有からレンタルやシェアリング、従来の一括払いとローンに加えてメンテナンス・税金コミコミの個人リースやレンタルでサブスクリプション(サブスク)など支払い形態も多様化しています。

また、ウェブで車を買う人も増加しています。展示場で現車を見ずに、新車ならともかく中古車でも売買されています。車の流通は間違いなく多様性の中にあります。だから、SSが車を売っても何の不思議もありません。

かつての社会人は、まず車を持つ、次に結婚そして家を建てることが人生設計でした。車は資産でありステイタスでした。だから車の外観、内装、メンテナンスにお金を使う人がたくさんいて、アフター市場に遅れて参入したカーショップが上場企業に成長させました。

現在は、資産から移動体といった感があります。それゆえに自動車販売市場に、SSが本格参入する意味があると思います。理屈で言えば、アフター市場で圧倒的な顧客接点(給油)を持っているので、流動化するニーズにSSの打ち出しがジャストミートする可能性は十分あります。あくまで理屈ですが。

全国石油協会の経営実態報告2019年度版によると、石油製品以外の事業として「車販」が15%と回答されています。ざっくりと約5千カ所のSSが車を売っています。

展示車両を持つ専門店の場合、在庫車の半分、回転率50%が「理想」だそうです。実際には30%そこそこのようです。

SSは消防法緩和によりフィールドで展示が可能になりました。専門店に比べて来店客数が圧倒的に多いので、車販のビジネスチャンスは広がりつつあると思います。

先日、地方都市で某COC会員のお店を訪ねました。まだ30前の若い子息が経営実務を取り仕切っています。先代はガソリン主体の経営でしたが、後継者はガソリン減販が続く中、周辺には有力広域店や元売子会社があってPBに優位性がない時代にSSの仕事に入りました。2SSのうち1カ所で車販を行っています。

知識ゼロから5年前に車販をスタートします。色んな人にあって相当に勉強したようです。親しみやすい人柄もあって、セルフSSでの店頭の会話から見込み客を見つけて、徐々に販売が動き出します。

開始3年目にメーカーの副代理店に昇格しました。私は、てっきり先代の経営方針に従っていると思っていただけに驚愕しました。彼は“深く静かに潜航”していました。

消防法緩和の昨年4月から新古車を展示していますが、年度後半に向かって勢いが付いています(数字は書きません)。片腕も育っているので、今の調子で行けば2030年には顧客の半分を車販客にするのも夢ではありません。車でつながれば(コネクテッド)EV時代にも対応可能です。

こういう話を書くのは、車販は元売直営や大手特約店よりも、小規模店向きのビジネスと考えるからです。5千のSSが車販をやっていても、実は相当に温度差が大きいと見ています。温度差とは、トップセールスとサラリーマン社員のモチベーションの違いです。

モチベーションが高ければ、冒頭の流動化する消費者の自動車選択肢にも必死に食いついていきます。トップは解決する人ですから。

小規模店はトップセールスでガソリン数量と粗利のハンデを吹き飛ばす、そんな勢いのある若手経営者の台頭が嬉しいところです。一事が万事、小規模店トップが本気になれば市場の中に幾らでも「すき間市場」を見つけることでしょう。

 

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


〒104-0033
東京都中央区新川2-6-8
TEL: 03(3551)9201
FAX: 03(3551)9206