COCと独立経営<748>「石油村発想」と異なる経営者群 – 関 匤

「なんでもいいから情報の千本ノックを!」と一部COC会員の要望に応え、ZOOM研修会を開催しております。

先日は、全国のSS経営者が様々な試みを行っている姿を報告していただきました。系列・非系列に関係なく、非常にしっかりした考えのもとに「石油村発想」とは明らかに異なる経営の姿に唸ってしまいました。

私は以前から「日本人の経営者が2万人もいて何かが出てこないのはおかしい」と述べてきましたが、実は水面下で業界の縛りから離れつつある方が少なくないようです。ルネサンスのように、供給業者ではなく小売経営者としての意識が再興していると感じます。

中には「SS商圏」という概念を超えて、顧客ではない人も含めた地域への関わりを強めることで、〇〇系列店ではなく「地域の〇〇会社」としてブランド力を高める実例もあります。物販でガリガリしなくても、「買うならあの会社」とSNSで発信される会社です。

この人たちは元売マークを掲げてはいるけれど、やっていること考えていることは元売の標準プログラムとは別の世界にあります。ガソリンは元売会社から仕入れているが、それは事業の1パーツに過ぎないという意識です。

元売のマーケティングは、ガソリンが売れることを前提としています。重厚なPOSシステムと多様な決済手段もガソリン増販の武器となっています。油外キャンペーンは販売部門の“油外収益”であり、もう1つはSSが油外で人件費をヘッジすることでガソリン価格競争を有利に戦えるという狙いが見えます。「指数」はそのバロメーターです。石油会社はガソリンを売る会社ですからそれは良しかもしれません。しかし、中小小売企業にとって、ガソリンは本当に主軸なのでしょうか。

研修会で講師から重要な指摘がありました。SSは販売サイクルを考えています。給油客がオイル交換、洗車を行う、車検を行う、車検から車販につなげる、車販客の鈑金を受注する、廃車・買取する…といったサイクルです。

一方、生活者には生活サイクルがあります。車に乗る時にはその目的を持っています。通勤、買い物、旅行、お見舞い、帰省…。それぞれに都合を抱えている生活者に対して、SSの都合で売り込んでも耳も貸してくれないことが多々生じます。

講師は「SSは本来、街のラーメン屋だった」と言いました。醤油、味噌、塩の違いはあっても確立された作業動線で手際よく効率的に品出しを行っていた。ところが“儲からない”とか“他店がやっているから”という経営者の都合で、ラーメン屋で北京ダックやタピオカドリンクを始めた。そうなると動線は混乱し、作業ミスが多発し、品出しが遅延し、不良在庫が積みあがる…。「結果的に固定費が増大してスタッフにノルマが強まる」とSSの販売サイクル自体が歪んでしまっている、と指摘しました。

確かに先人に聞くと、モータリゼーション初期のSSはラーメン屋の喩えに近かったようです。給油作業中にオイルや冷却水の補充、プラグの交換などアイランドでのワンストップショッピングが成立していました。

しかし今に至るまでに、道路事情と自動車や部品機能が飛躍的に改善されて、アイランドでの補充交換は見かけなくなりました。代わって様々なメニューがSSに登場したのはいいけれど、先のラーメン屋の北京ダックの喩え通りメニューはあってもやりきれていないのが実情ではないでしょうか。

そういう流れにアンチテーゼを投げかけるSSがあって、「当店にできること」を明示しています。“やれないことで元売さんにお付き合いできない”という経営者の意思表示です。

研修会では、洗車機もピットもないのに「油外収益数百万円」というSSに驚かされました。セールスルームを改造してショップを経営していて、安定的に収益をあげています。いろいろ考えさせられましたが、一度、ゼロベースからSS業態を再検討すべきと思うことになりました。

COC・中央石油販売事業協同組合事務局


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