アフターマーケットの動向を見ようと、オートバックスセブンの2020年度決算と関連資料を確認しました。
新型コロナでフランスなど海外が影響を受けて、家賃交渉や販管費削減で相当圧縮したものの営業赤字です。一方、国内は売上高が微減ながら営業利益は28%増加となっています。緊急事態にともなう経費削減もありますが、最近5カ年では最高益です。
コロナ感染拡大で3,4月は10%前後の客数減少と5月も含めて▲10~18%もの売上げ減少となっています。しかし、6月から交通量が回復したことで客数が戻り、全前年の消費増税駆け込み反動を除いて前年を超えています。さすがに緊急事態再発動の2、3月は減少していますが。
説明資料にこうあります。「クルマの利用状況や価値観の変化により、商品別売上動向が変わる。」ようはコロナ禍の環境変化で、バックスが得意なタイヤや好調だった新車販売にブレーキが掛かり、その一方で、洗車用品、キズ補修関連、車内小物、バッテリーが伸びたということです。
バックスの「売り上げ動向変化」ですが、アイテムの中で地味な存在だった抗菌・除菌アイテムが感染対策で急激に伸びています。除菌ウェットティッシュやマイクロファイバークロスなどです。空気清浄機、抗菌タイプのエアコンフィルター、車載用プラズマイオン発生機置き型・スプレー型の安定二酸化塩素発生用品などはコーナー陳列するほど人気が出ています。
これも感染防止の拡大解釈がおこなわれたのでしょうか、洗車関連で高級な洗車シャンプーやコーティング剤も売れています。ほとんど動きの少なかった商品群です。車好きのバックス顧客が、すごもりで時間的余裕ができたためか定番の洗車セットを使って車の手入れに精を出したようです。店舗で施工する車内清掃商品も急に動いています。
同じアフターマーケット市場にありながら、SSとの業態と商品力の違いが羨ましくなります。
バックスは車が動き始めたら客数、客単価をV字的に回復させています。コロナ禍の消費者心理を捉える商品ラインナップが用意されていたからです。主力のタイヤや車販の落ち込みをカバーして平常時を超える営業利益を計上しました。コロナを商機に変ええたわけです。
方やSSは“ガソリン粗利特需”に恵まれましたが、義務商品の車検やセルフ洗車を除いて接客対応が不可欠な油外アイテムは苦戦したと思います。抗菌除菌商品を揃えたSSもありますが、あくまで機敏な一部の経営者、店長さん限定です。
物理的な店舗制約を持つSSを大型売り場の専門店と比較してどうなるのか、と言われそうですが、元売自ら「トータル・カーサポート」を謳うのですから系列店に対する何らかのコロナ対応は可能であったと思います。バックスの客数増加には、相当数の新規客がいるはずです。抗菌・除菌の切り口で、ふだんは車にこだわりのない人、カーショップを利用しない主婦などが来店したことは想像にかたくありません。
コロナで「新常態」というフレーズが使われるようになりました。コロナで新たにカーショップを利用した人たちは、ガソリンはSSで給油してカーアフターはカーショップが新常態になるかもしれません。
「新常態」の最新事例を見られる場所があります。バックスは今年4月からジョイフル本田の車検・タイヤセンター6店舗を子会社化しています。「バックス・ブーツ」というブランドです。ジョイフルのSSはすでに出光興産が買収しています。そしてSSはガソリン特化型です。給油は出光、車検整備はバックスの象徴的な事例です。
キャンペーンで給油客に声掛けしてタイヤやバッテリーを売るような“油外発想”では、ジョイフル業態の来店客を増やすだけでしょう。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局