コロナ禍で新車のサプライチェーンが混乱していることから、車販業界の調達が中古車市場に向かっています。
大手オークションUSSのデータを見ると、単純平均で4―9月の成約単価が86万7千円で前年同期より3割高、1台15万円高値となっています。高いけれども成約台数も15%増となっています。
昨年がめちゃめちゃだったので単純に比較はできませんが、自販連統計で納車が遅れに遅れている新車販売(大型小型乗用)も前年比2.3%ながら増加しています。
アフターマーケット市場のバロメーターとなるオートバックスの月次データでも、今年4―9月の車販は前年反動もあって大きな伸びとなっています。8、9月で通常の数値になっていますが、4月72%増、5月29%増、6月16%増と大きな数字となっています。
何を言いたいかといえば、乗用車を持ちたい人が依然として増えていることです。
自動車検査登録情報協会の7月の乗用車登録台数は、6月比で1%増えています。自動車全体でも1%増です。これってほぼガソリン車、軽油車の数字です。
ガソリン販売市場はピーク時に比べて3割縮小しています。しかし、乗用車台数は増加を続けています。世の中の識者という人たちは脱炭素がすべった、ころんだとかまびすしいですが、CO2排出自動車は増えているのです。
自動車が増えてガソリンが減るという背景には、明らかに自動車燃費の向上があります。私は「1998年」をシンボリックな1年と見ています。
この年に、トヨタがハイブリッドのプリウスを発売しました。燃費30㌔㍍を謳って、「次に給油に来るのはいつだろうか」という実にインパクトのあるTVCFにSS業界は驚愕したものです。
ハイブリッド自体は遅々とした伸長率でしたが、自動車メーカー全体が「省エネカー」に一斉に舵を切るきっかけとなりました。二十数年を経て、乗用車に占めるハイブリッド比率は15%となっています。
1998年のもう1つのシンボリックな出来事は、軽自動車の規格変更でした。排気量が増えて、車内の居住性が大幅に高まりました。バブル崩壊の最中とあって、軽自動車が飛躍的に増大しました。当時、乗用車の15%だった軽乗用車は35%を占めています。
ハイブリッドは人と荷物が乗れば実燃費は20㌔㍍以下ですが、軽乗用車は平気で20㌔㍍走ります。
ハイブリッド車と軽自動車が、乗用車台数が増えるにも関わらずガソリン需要を縮小させた構造要因であることは確かです。
そして、もう1つのガソリン減販要因は「セルフ化」です。COCの皆さんに聞くと、フルサービス時代は1回の給油数量は25㍑近かったのですが、セルフ化したら15―18㍑になっています。“満タン運動”しても、セルフは顧客のTPOですから定量定額が当たり前になっています。
セルフが業界の「自滅点」になっているのは間違いないでしょう。
たとえ省燃費であっても、現時点で車に乗る人は増えています。そして結果的に、石油業界はガソリン3割減販=CO2の3割削減を実現しています。
業界団体はどうしてこの「CO2削減実績」をアピールしないのでしょうか。これは2050年にニュートラルするというあさっての話ではなく「実績」なのに。
最大手元売の再生エネルギー発電会社の2千億円の買収が大きな話題となっています。大企業は長期的視点での脱炭素戦略が求められているのでしょう。
しかし、業界の足元には車を買いたい人と、燃費の良い車に乗る人がわんさかいます。この人たちは石油会社のめしのタネです。ここにフォーカスして、SSをもっと面白い場所にする大胆な投資はないのでしょうか。
2030年とか2050年とかのレンジを考えれば、現時点とは比較にならない革新技術が登場するでしょう。それまではSS店舗の価値向上を考えたいものです。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局