資源エネ庁が2022年3月末のSS数を発表しました。2万8475カ所、前年比530カ所減です。
ひと頃の年間2000カ所近い減少が続いた状況に比べれば、最近は小康状態の間があります。SSが激しく減少したことについて、安売りとかセルフが直接的な要因とされています。それもありますが、第一次石油危機から自由化まで、規制によってSSのスクラップ&ビルド(活性化)が遅滞し、古い時代の立地・設備・規模のままで環境激変にさらされたことが大きかったと思います。
自由化時の1996年度と比べてみると、52%の減少で半減以下です。26都府県で50%超の減少です。東京都は66%と3分の2が消えたことになります。これだけ減っても都内で「SS過疎化問題」が叫ばれないのが不思議です。
私は業界のデータが出ると、時系列で考えます。そして出来るだけ小さく考えるように心がけています。米国流通最大手のウォルマートを創業し躍進させたサム・ウォルトンの言葉「小さく考えよう」に感銘を受けたからです。
自由化時、約6万カ所のSSがありました。93%が元売系列SSでした。改めて古い数字を見ると驚くのですが、自由化後の5年間で7000カ所以上のSSが減少しています。内訳を見ると、当初5年で系列SSがほぼ1万3000カ所の減少です。一方、PBは自由化当時は7%に過ぎませんでしたが、当初5年で約6000カ所増加しています。この間に、相当数の系列SSがPBに置き換わったことが分かります。
1996年度と2021年度を比較すると、系列SSは60%も減少しています。PBは96年当時は少数派だったので数では増えています。しかし、ピーク時と比べると40%減少しています。
系列非系列に関係なく、
①セルフ業態
②独特の存在感(利益構造)
のいずれかでふるいにかけられてきたと思います。自由化から10年ほどは、セルフ化すれば客数が増えました。これは1960年代にスーパーマーケットが急成長した時代をきれいにトレースしていました。「スーと現れパーと消える」と呼ばれたスーパーと同じく、2010年辺りから給油のセルフだけでは立ち行かなくなりました。
独特の存在感とは、家族経営の1フルサービスSSが「給油は店の1機能」と見切って、経営者トップセールスの強みを発揮してやりたいことをやって結果を出しているSSです。
自由化以降のSS減少を、過疎化とかサプライチェーンの危機と大声を上げる人たちがいますが(本気かな?)、四半世紀の環境激変を生き抜いてきた人たち、とりわけ元売との特殊関係を持たない人たちほどかなりしたたかになっています。
私は独立系経営者が成長しない業界は“カス”だと思っています。だって、小売業界においてセブンイレブン、ユニクロ、ジャパネットといった成長企業は元売系列店じゃなかったのです。ユニクロはアパレルが系列強化されていた時代に、VANブランドを安売りして出荷停止を食らっています。そして出荷停止したVANは倒産しています。山口の小さな商店の経営者の判断が間違っていなかったといえます。
現時点で、ことガソリン仕入れに関して系列安・非系列高になっています。円安で元売がバカバカ輸出して国内市場を引き締めているようです。きついなと自由化直後に新規参入したPB経営者に聞いてみたら、「PBってそういう存在でしょう」とあっさり言われました。「何年かに一度こんな経験してきたから、ああ、また来たかって感じです」
資源エネ庁のSS数を眺めているうちに論調が撥ねてしまいましたが、やはり独立経営者の健全さを確認しました。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局