先回、米国ウォルマート創業者サム・ウォルトンの「小さく考えよう」という言葉を引用しました。舌足らずならぬ筆足らずで、一部にこの言葉に対する誤解があったようです。
「小さく考える」を経営の縮小均衡と勘違いされる方がいらしたようです。
縮小均衡どころかチェーンとして成長するためには、1店ごと1商品ごとに売れ筋と品揃えを考えようという意味です。1店ごとに商圏のお客さんに最適化すれば、強力なチェーン力となります。成長するには小さく考えようという主旨です。
先週、「ガイアの夜明け」というテレビ番組でコストコの栃木壬生店の新店立ち上げが特集されていました。
石油村でコストコといえば「ガソリン安売り業者」という視点でしか論評されません。名前を聞いただけで眉をひそめる人もいるでしょう。壬生店にはSSも併設されていますから。
番組ではガソリンのガの字も出てきませんでした。店づくりと商品に特化した内容でした。まさに「小さく考えよう」を実践していました。売り場と通路をミリ単位で考えています。本部の標準仕様はあるのですが、店長の判断で壬生店の通路を広めにしています。大型カートに大量の商品を載せた来店客が無理なく対向できます。
工事が完了した時、売り場の基本レイアウトを確認するために日本法人のカナダ人社長がやってきます。広めの通路を評価する一方で、顧客の交通が集中する中心エリアに来た時にこう言います。「これでは売り上げ優先の店だ。お客さんが歩きにくいだろう」。この社長も小さく考えています。
壬生店に商品が搬入されて売り場に並んだ時に、店長は「パレットの置き方が雑だ」と調整を指示していました。基準位置より数ミリ単位で不揃いになっているというのです。それだけで売り場の訴求力が違ってしまうというのです。
商品も同様です。深夜の商品搬入と売り場が紹介されていました。驚いたのは、日々の売れ筋によって棚を変更していることです。倉庫なのでパレットごと移動できる作業性もありますが、毎日売り場をリフレッシュしています。
大規模店なので勘違いしがちですが、コストコの商品アイテム数は3500から4000だそうです。総合スーパーの10万をはるかに下回りコンビニよりは多いレベルです。ダブルのトイレットペーパーは1アイテムだけです。ドラッグストアでも数アイテムありますから物凄い絞り込みです。1社に絞り込み荷姿を大型化することで、メーカーにとっては取引交渉に応じやすくなります。
また、出店地域の食習慣に応じた商品や銘品もアイテムに加えています。もちろんお付き合いではなく「良い商品」を厳選し、さらにコストコの荷姿で設計しています。
コストコに限らず大手コンビニの単品管理もそうですが、「小さく考える」小売業は強いなと感心しました。
いくら石油村がコストコを極悪人呼ばわりしても、世間の常識とは完全にずれています。なにしろ消費者が支持しているのですから。書籍あるいはネット上に「コストコ攻略法」とか「賢い使い方」が溢れているのです。
しかも自治体が「コストコおいで、おいで」の大合唱です。雇用を吸収する上に、確実に人の流入数が増えます。コストコという民間企業が自己投資で公共事業をやってくれるようなものです。
供給の最後の砦と大言壮語したり、内向きの非難中傷ばかりで、本当に石油村には「お客が喜ぶ楽しい店づくりの話」が少ないなと悲しくなりました。
COC・中央石油販売事業協同組合事務局