油業報知新聞の新年号に元売社長の新春トップインタビューが掲載されています。
石油メーカーであるゆえにカーボンニュートラル(CN)に適応すべく、石油一本足から電力、LNG、水素、再エネなどエネルギーのポートフォリオ拡充に投資強化という点では異口同音です。
SSに関しては、記事の文字数が談話全体の1割ほどです。CN対応で元売の企業自体の事業構造転換が急務なのでしょう。「変革」や「マインドチェンジ」といった言葉が見られますが、元売社員の意識転換を促しているように見えます。(1996年の自由化で変革とマインドチェンジしていなかったようです)
SSの位置づけは、これも「地域の生活プラットフォーム化」で共通しています。先細りの給油集客以外に、様々なサービス機能を併設して地域生活者のニーズを取り込もうという考え方です。
構想は良しとして現状は実験的段階です。特約店も業態が多岐にわたるので、元売構想の理解度や適性に相当の温度差が生じることでしょう。
話はまったく変わります。
米国のコンビニ協会(NACS)と調査会社ニールセンが、直近のCVS店舗数調査を公表しました。米国ではCVS=ガソリンスタンドとして理解されています。
2023年初頭現在で出された上記調査の店舗数で、シンボリックな結果が出ました。2018年をピークに減少傾向にあったCVS店舗数が増加に転じたのです。
といって、日本のようにある時期から減少基調にあったのではありません。15万カ所を基調に微増減を繰り返していました。ただし、18年から5年連続でわずかずつ減少し続けていました。
CVSでガソリンを売る店舗は8割に達します。CVS全体の伸びよりもガソリン店舗数の伸びが上回っています。
20年のコロナ禍で、米国では日本同様にガソリンは一時期激減しました。これも同様に先が見えない不安から価格競争よりも利益確保に転じています。
コロナ禍以降、CVSチェーンで激しいM&Aが続いています。代表格はセブンイレブンによるスピードウェイの大型買収です。力のあるチェーンが積極的に企業買収や店舗買収に動いています。
ここからは私の見解です。コロナ禍の2020年、世界中の小売店舗は閑古鳥の住み家となりました。必需品を売るSSは恵まれたものでした。米国のSS(CVS)はこの時に店舗力の優勝劣敗が一気に表面化しました。
CVSも店内入店を忌避する消費者に対応してケータリングやテイクアウトが増加しました。この時、CVSの商品力の違いが明らかになりました。
ガソリンと違って味覚で違いが判る食品ですから、美味しいものが選択されます。商品開発力に強みを持つチェーンが、DXも駆使しながら支持を拡大しました。DXではアマゾンの無人CVSが出現しました。コロナ禍ゆえに思い切ってリリースできたのでしょう。
その結果、20年以降、SS(CVS)業界でM&Aがもの凄い勢いで行われてきました。
セブンイレブンのスピードウェイ買収は世界的な注目を集めました。スピードウェイは全米CVS第3位企業でした。母体となるマラソン石油は燃料油販売で全米2位です。マラソンは将来を見込んだ場合、石油会社によるCVS商品開発投資に限界を感じていたのではないかと思います。
米国では店舗拡大と撤廃のメリハリが激しいくらいに明確になっています。ようはCVSを進化させるか否かが生命線を分けています。SS(CVS)店舗数の増加の背景にはCVSの品質競争がある、と考えています。
ひるがえって、これから「生活プラットフォームを実験する」という元売構想ですが…。日本ではCVSが米国以上に「プラットフォーム」を確立しています。しかも5万数千店も。食品スーパーや道の駅を加えれば、そのインフラで十分じゃないでしょうか。
米国はSS(CVS)減少基調から反転増加へ※CSP Dayly Newsより筆者作成
COC・中央石油販売事業協同組合事務局